2026年1月31日(土)

オトナの教養 週末の一冊

2026年1月31日

嘘なしでは生きられない?

虚言の国 アメリカ・ファンタスティカ
ティム・オブライエン(著)村上春樹(訳)ハーパーコリンズ・ジャパン 3630円(税込)

虚言の国 アメリカ・ファンタスティカ ティム・オブライエン(著)村上春樹(訳)ハーパーコリンズ・ジャパン 3630円(税込)

 『本当の戦争の話をしよう』(文春文庫)などで知られる作家の最後の作品とされるのが本書。物語は、複数の名前を持つ男・ボイドが銀行強盗をするところから始まる。そして、銀行の窓口にいた女・アンジーも一緒に逃走する。誘拐されたという感じでもない。出てくる人々は、皆どこかに嘘を抱えている。嘘でもついていないと、この殺伐とした世界は生きていけないと言っているように感じるが、ボイドは嘘によって魂を救われ、アンジーは嘘なしで生きていける強さを持っている。村上春樹は「シリアスな喜劇仕立て」と解説している。2人を中心としたロードノベルの結末とは……。

国家の歴史と人種

アメリカ史とレイシズム
中條 献
岩波新書
1056円(税込)

アメリカ史とレイシズム 中條 献 岩波新書 1056円(税込)

 奴隷制度、ジム・クロウ制度、ゲトー、ハイパー・ゲトーなど、米国におけるレイシズムの制度について触れる本書は、「人種」が自然な分類ではなく、構築されたものであると語る。独立時、合衆国憲法の中に「奴隷」という言葉を入れなかったが、暗に認めていた史実や、ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)が不当な拘束について裁判を起こした黒人女性をインタビューした話など、時系列に沿って語られる。いまだ終わらない人権問題の歴史について知ることができる。

これからの世界はどうなるのか?

アメリカの覇権喪失と 世界の転換 浅海 保 筑摩選書 2310円(税込)

 覇権とは、「政治的、経済的、さらに軍事的にも優位にある国が、他国を支配し統制すること」──。米国がこれまで保ってきた覇権はいつ、どのように弱まったのか? 研究者によってその見方は異なる。著者はハマス・イスラエル戦争が消滅の決定打になったが、世界の構図の行方はウクライナ戦争から始まっていたと指摘する。世界の力関係が変わりゆく中で、日本は自らの民主主義を守りながらも、その立場を確立するために経済力の回復と制度改革が欠かせない。

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