2024年11月22日(金)

Wedge REPORT

2014年7月14日

 投下される資本が、まず国民の所得となり、それが消費拡大や新事業へ回ることにより、内需拡大を押し上げる。それがやがて供給側の発展を促し、雇用もまた拡大していく、という経済成長の正のスパイラルが回る。その過程で、インフラの整備こそがそのスムースさを下支えするだろうことは、1964年の東京オリンピック後の日本の高度成長過程を参照するまでもないだろう。これがまさに、ケインズ政策を効果的にする要因であるし、公共事業によるインフラ整備が是とされる理論的な根拠となる。

 そして、その結果としてボトムアップ的に中産階級が厚く形成されてくれば、やがて新興国は経済先進国へと歩を進められるかもしれないし、少なくともその足がかりはつかめるだろう。

 たとえば中国の経済は、道半ばということもあり多少の異論や反論はあるかもしれないが、(たとえ共産圏を標榜しているにしても)このようなプロセスから大きくは外れていないように見える。では、ブラジルの場合はどうか。

 経済構造の分析とモメンタム(方向性と勢い)の分析をしていくとして、重要なのは、経済成長率(GDP推移)、為替、政策金利、インフレ率、失業率、資源の有無と配分、再分配政策、そしてそれらを含んだ大きな文脈としての歴史的経緯である。

W杯、五輪の効果は限定的?

 じつは、ブラジル経済は、他の新興国のそれとは趣を異にするところがいくつかある。

 今回のW杯、そして、2年後のリオ五輪が注目され、当然、その波及効果はあるのだとしても、それは直近にだけ現れるものではなく、すでに織り込まれているものも多くある、ということだ。

 たとえば南アでは、W杯開催時の経済成長率(実質GDPベース)は7%台だったが、今回のブラジルに関しては、2%台ではないかという見方がもっぱらだ。
それは、W杯の経済効果の少なさを直接的に示していると考えるには難しい面もある。国際的な大イベントは10年弱程度の長い期間に前もって決まっているため、その前に十分織り込まれている、ということもありえる。

 逆に、もし開催が危ぶまれれば、その織り込みはより直前になる、ということも当然ありえることだ。もしかしたら、ブラジルに関しては、W杯や五輪の開催は非常に蓋然性の高いものとして理解されていたのかもしれない。


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