南ベトナム出身者は北ベトナム出身の共産党エリートが嫌い
12月21日。ホーチミン市の中心街の裏通りにあるホステル。低額料金で清潔なためバックパッカーに人気であり、常に予約で満室状態。20代半ばのカップルが住み込みでマネージャーと雑事一般を兼任している。2人ともホーチミン市南方デルタ地帯の農村部出身。
ベトナム共産党について何気なく聞いたら、真剣なコメントが帰って来た。簡単な英語とスマホの翻訳アプリを使い会話をしたところ「ハノイ政府の共産党支配を旧南ベトナム出身者は嫌悪している。特に旧サイゴン周辺やデルタ地帯では嫌われている。北部出身の共産党エリートは態度が尊大で我慢できない」と感情を露わにした。
南北融和は建前だけのスローガン、今も南ベトナム出身者は差別されている
2人によると、旧南ベトナム地域の出身者でも共産党員になり公務員も多数いるが、主要・重要ポストは北の出身者で固められているという。南部出身者にはガラスの天井があるようだ。
ちなみに現在の政治局員16人の中で南部出身者は3人。ベトナムの最高指導者である歴代の共産党書記長もハノイ及びハノイ近郊の北部出身者が大半をしめる。現在の内閣には4人の南部出身者がいるが、公安・国防・外交などの重要ポジションは全て北部出身者である。
ベトナムは中国のような共産党による監視社会(=監獄社会)なのか
今回ベトナムを歩いて気づいたのは、ベトナム庶民が“中国共産党支配体制”をかなり注意深く観察しており中国共産党の動きに敏感であることだ。
本稿(上)で紹介したハノイ近郊出身で長年国営食品会社に勤務していた35歳の女性リンは、ベトナム社会が中国社会と比較したら自由であると評価した。ハノイの旅行代理店勤務のアラサー女子は「ベトナム社会は中国よりも自由度が高いが、“反政府的言動・体制批判”はできない雰囲気である」という。庶民は自衛手段として自発的に反政府・反体制を口にすることを避けていると補足した。
ホーチミンのホステルを運営しているカップルは「政治的言論の自由はベトナムには存在しない」と断定した。「家族とか親友の間で内緒話として政治の不満を語るのが許容される限界」と分析した。
男性は「幸いにもベトナムではまだ中国ほどネット規制・検閲がないが、いずれ共産党政府に予算と人員の余裕が生まれてくれば国民全員がモニターされる」と危惧した。男性の父親は国営工場を退職後にネットで工場の就労実態について批判をしたらサイバー取締りで警察に呼び出され査問されたという。
さらに学校教育でホーチミンや革命・独立の歴史を学ぶが南部地域の若者は懐疑的であり「ベトナムでは学校教育は共産党による洗脳の手段である」と批判した。
外国人旅行者には分かり難いが、やはりベトナムは“共産党一党独裁体制国家”なのである。
以上 次回に続く
