昨冬以降、ウクライナではロシア軍による民間の鉄道車両への攻撃が相次いでいる。東部スミでは、列車の移動の分岐点にあたる施設が攻撃され、南部ヘルソンでも列車が攻撃され死傷者が出た。
鉄道に対する攻撃は、戦時下を生きるウクライナ人にとり重大な意味を持つ。空爆が続く中、民間飛行機が飛べないウクライナ国内で、鉄道は国内各地や欧州に脱出するための移動手段として利用されているからだ。
開戦以降、ロシア軍による鉄道駅などへの攻撃は限定的で、ウクライナ国民にとっては鉄道が攻撃されるという意識はほとんどなかった。しかし、昨年12月ごろから状況が変わり、彼らは国外に逃げることも容易ではなくなった。しかも、男性の国外移動が原則認められないウクライナでは、鉄道の乗客の大半は子供連れの女性か老人だ。
電力奪う攻撃
厳冬期を前にウクライナの発電施設などを攻撃して、都市の市民生活から電力や温水を奪うという手法は2022年の開戦半年ごろから鮮明になっていた。電力当局は、22年時点では計画停電を実施するなどして対応し、キーウなどの市民生活は商業施設の突然の停電や数時間にわたり電気の供給が途切れるなどの強い不便を強いられたが、何とか一定程度の生活水準は保たれていた。
このように書くと、「ウクライナもロシアの石油精製施設を攻撃している」との指摘があるかもしれない。しかし、ロシアの攻撃は規模がまったく異なる。
1月9日に行われたキーウでの攻撃は、市内の建物の約半分にあたる約5600棟が停電となり、市内では現在も、電力を使用できるのは1日に2、3時間という状況に追い込まれている。屋外の気温はマイナス30度に達することもあり、電力や集中暖房が効かない屋内はマイナス10度を下回る。
人々は市当局が用意した屋外テントで暖をとったり、携帯電話など生活必需品の充電などを行っていたが、受け入れられる人数にも限りがあり、横になって眠ることもできない。
キーウ市当局は、「電力や水道がある市外に避難することができる人は、そのようにしてほしい」と訴えたが、郊外のダーチャ(別荘)などの電力不足の状況はさらに過酷で、結局人々は自宅に残らざるを得ない。
極寒の中、市民らは可能な限りの工夫を凝らして1日2時間程度しか電力が供給されない生活に耐えている。
