米国の国防は石炭火力に依存
米国防総省の石炭火力からの電力購入については、日本のメディアを含め、温暖化対策に逆行していると批判する論調が多い。しかし、国防に必要な電力にもっとも重要なことは温暖化対策ではないだろう。安定供給が最重要に違いない。電気がなく多くの設備が使えなくなれば、容易に外敵の侵入を許してしまう。
電力調達の大統領令に関するホワイトハウスの説明文章は、強靭な電力網が必要と指摘し、次のように述べている。
・信頼性の高い電力網は、軍事施設、軍事作戦、防衛産業の生産に電力を供給し、アメリカ国民の安全を確保する上で不可欠であり、混乱が長引けば作戦即応性と国家安全保障が脅かされる
・国防総省は、電力を継続的に供給する膨大な石炭資源を戦略的に活用することが急務だ。風力や太陽光などのいつも発電できない電源は、異常気象の際には信頼性が低く、依存する電力網や防衛施設は停電に対して脆弱になる
トランプが推す化石燃料であれば、石炭だけでなく天然ガスでも良さそうだが、天然ガスよりも石炭のほうが良い理由もある。
価格も供給も安定的な石炭
シェール革命以降、米国の天然ガス価格は大きく下落し、天然ガス火力の競争力を高めた。天然ガス火力は老朽化した石炭火力を駆逐し、発電量を大きく伸ばした。
天然ガスは、パイプライン経由でカナダとメキシコに、液化天然ガス(LNG)の形で、欧州と日本を含むアジアに輸出されている。その価格は冬季の需要増の影響に加え国際市場の影響も受ける。22年のロシアのウクライナ侵攻による天然ガス価格上昇は、米国内の発電用天然ガス価格にも及んだ。
米国の石炭も輸出されているが、輸出市場と国内発電用石炭市場間の関係は薄く、国際市場の影響をさほど受けない。ロシアのウクライナ侵攻を受け、国際市場では石炭価格は一時10倍にも高騰したが、国内発電所向けの石炭価格は資機材へのインフレの影響を受け上昇した程度だった。
安定的な価格となれば石炭に分がある。発電用石炭供給量も下げ止まり安定供給可能だ。輸出市場の伸びも予想されず競合はない。
ただし、政権交代により石炭への逆風が再度吹く可能性もある。そのため数十年におよぶ需要のコミットが必要な新規炭鉱開発はないので、トランプも石炭火力の新設までは踏み込んでいない。


