プーチンは、同氏がトランプ氏にそう思い込ませようとしているほど、止められない人物ではない。過去1年間の問題は、トランプ大統領がこの戦略的好機を捉え、ウクライナでより強硬な交渉をすることで、米国に対するロシアの脅威を軽減し、北京をはじめとする世界の悪役たちを抑止できるかどうかだった。
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ロシアはより厳しい状態に
上記の社説、およびそれが引用するCSISの論説は、「ロシアの勝利は近い」あるいは「ウクライナは早晩敗北する」といったプーチンのナラティブが、事実によって裏付けられていないことを示している。
このような形で政治的効果を狙ったナラティブを突き崩していくことは極めて重要であるが、ロシアが直面している現実は、①戦闘における費用対効果の低さ、②ロシア経済の構造的脆弱性、③ロシアにとっての国際環境の悪化、という三つの分野において見る必要がある。
今日、ロシアの抱える問題の深刻さのレベルが質的に一段高まった可能性があり、それはウクライナ戦争の行く末について、26年を一つの重要な転換期にできる可能性を示唆している。問題は転換期にするという政治的意思があるかどうかだ。
以下では、これら三つの分野それぞれの抱える問題の真の深刻さは何であるかを探ってみたい。
高い死傷率と、低い進撃速度
第一に、戦闘における費用対効果の低さについては、上記の社説はCSISの論評を引用して、ロシアの全面侵攻開始から今日にいたるまでに露側は約120万人の死傷者(内、死者32万5000人)を出している一方で、進撃のペースは極端に遅いとしている。22年秋以降、ロシア軍が獲得したウクライナ領土は数%以下でほとんど変わらないのに対し、死傷者数は一貫して増え続けた。
ロシアの総人口は約1億4600万人、労働力人口約7500万人、20~49歳男性(主たる兵役年齢層)約3000万人とされているところ、120万人は総人口の0.8%、労働力人口の1.6%、20~49歳男性の約4%に当たる。これに、出生率(現在約1.4%)の長期低落傾向が加わることで問題がさらに深刻化している。
そして、以上のような高死傷率、低進撃速度という状況を質的に転換する展望が開けない中で、プーチンはウクライナ4州の完全制圧を強行しようとし、さらに兵員の数を増やそうとしている。
