押し寄せるインフレ
第二に、ロシア経済については、全面侵攻直後から23年第1四半期頃まで制裁の影響でマイナス成長が続いた後、一時的に「戦争特需」で盛り返し、23年から24年は4.1~4.3%の成長を達成した。しかし、24年の中頃をピークに下降局面に入り、25年は0.6%で、14年のクリミア併合を受けた制裁による経済後退以来、最も低い成長率となった。
戦争を続ける限り、労働力不足と民生経済の供給不足は続き、そのため常にインフレ圧力に晒され、インフレ対策のため中央銀行は高金利政策を取らざるを得ず(現在政策金利は16%)、すると財政赤字を埋め合わせるための国債の利回りも高くなる。さらに制裁で国際資本市場から締め出されているため、借入れもできない。
結果的に増税に走るしかなく、本年1月1日から付加価値税は20%から22%に上げられ(加えて課税最低限も下げられた)、これがさらにインフレを招く悪循環に陥っている。問題は、このような経済成長の落ち込みの中で、財政にとっての頼みの綱である油価が下落傾向にあって、当面上昇の兆しはないということだ。
イラン情勢も影響
第三に、ロシアにとっての国際環境も加速度的に悪化してきている。24年末にはアサド政権が崩壊し、旧ソ連圏では25年8月、プーチンがロシアの「勢力圏」と見なしてきた中央アジアのアルメニアとアゼルバイジャンが、ロシアではなく米国を仲介として和平に向けた共同宣言に署名し、ベネズエラに至っては、本年1月の米国による攻撃の前にプーチンは連帯と支持を表明しながら、結果的に何らの措置もとれず、さらにベネズエラが配備したロシア製防空兵器は全く機能しなかった。加えて、ロシア船籍として明確に確認されかつ公式に追跡回避の要請を受けていたロシアのタンカーを、米国が拿捕するケースが発生している。
また主要な武器供給源であり、制裁回避において友好国であったイランも混乱状態にある上に、米国の軍事的プレッシャーの下に置かれている。イランを失うことはロシアにとって中東における影響力を大きく低下させるのみならず、ロシア南部国境の不安定化をまねく可能性もある。
またウクライナ戦争との関係でも、イランはドローンやミサイル等をはじめとする主要な武器供給源である。同国の混乱は、ロシアの戦略環境の変化の中でも特に深刻な意味を持つものである。
