存在しない「ウィン・ウィン」
日本は、日本からの輸入品に課された関税率の引き下げを条件に、5500億ドル(約85兆円)規模の対米投融資を約束した。しかし、トランプ関税の法的根拠が覆り、「違憲」となった。すでに、対米投融資の第1弾として3つのプロジェクトが選定され、3月19日の日米首脳会談に向けて第2弾のプロジェクトが検討されていると報じられている。
中間選挙を睨み、日本からの対米投融資を加速させたいトランプだが、日本側は逆に投融資に対してペースを落とすことが重要である。
今後、中堅国と連携を取りながら、関税の合意からの撤回や還付を求めることも検討してもよいだろう。これまで、関税交渉は各国がトランプ政権と個別に交渉を行ってきたが、米連邦最高裁判所のトランプ関税「違憲」の判決を受けて、中堅国が団結して再交渉を行う方が、「1対1」の交渉を好むトランプには効果的であろう。
加えて、日本側はトランプを恐れ、常に機嫌をとる交渉スタイルをもう変えた方がよい。米国民は、トランプは嘘をつき、決して「強い」人間だとはみていない。英誌エコノミストと調査会社ユーガブの全国共同世論調査(2026年2月13~16日実施)の調査結果をみてみよう。
同調査では、「トランプ大統領はどのぐらい嘘をつくと思うか」という質問に対して、50%が「たびたび」、20%が「時々」と回答し、「嘘をつく」が合算で70%であった。一方、13%が「めったにつかない」、7%が「決してつかない」と答え、「嘘をつかない」は20%に留まった。約7割もの米国民は、トランプを「嘘をつく」人物と捉えている。
しかも、「強さ」はトランプを描く言葉かと聞いたところ、35%が「描く言葉」と回答したのに対して、29%が「描く言葉ではない」、35%が「分からない」と答えた。米国民の約65%が、トランプは「強いリーダーではない」ないし「強いリーダーか分からない」と考えている。日本人が描いている「トランプ=強いリーダー」というイメージとズレているのではないだろうか。
トランプは嘘つきで、強いリーダーではないと考えている米国人から見れば、日本の交渉スタイルは「完全服従」に見えて当然だ。トランプを恐れて彼の機嫌をとることに時間とエネルギーを費やす交渉スタイルを変える時期がきた。
トランプは2月24日、1年間の国内外の施政方針を表明する一般教書演説で、「人々は私に米国は勝ち過ぎていますと言う」と述べ、将来も勝ち続ける「勝者米国」を強調した。この言葉は、昨年からMAGA集会で使用されているフレーズだ。
日本は、トランプとの交渉では「ウィン・ウィン」が存在しないことを忘れてはならない。
