そして、今後の入札問題もある。国営機関であるパナマ運河庁(ACP)は1月、2つの新港と液化石油ガスパイプラインの入札条件を発表した。ACPは以前、入札はどの国の企業にも開かれていると述べていたが、中国企業が最も競争力のある応札を行った場合、ACPはそれを拒否するための方法を見つけなければ、再び米国の怒りを招くというプレッシャーにさらされるだろう。
ベネズエラの独裁者マドゥロの拘束や、グリーンランドの主権をめぐる不穏な動きが世界の注目を集めている。しかし、トランプがパナマに加えている圧力の方が、米州全体にとってはより重要な意味を持つ。小国は脆弱だからだ。
米国はいま、西半球を「敵対的な外国勢力による侵入や重要資産の所有から解放された地域」にしたいと考えている。パナマはその先例となる可能性がある。
この問題を追っているあるパナマ人弁護士は、かつてCKハチソン社を擁護した多くのパナマの政治家が、いまや米国の強い政治的圧力の下で同社を激しく批判しており、「法律は変わっていないが地政学的な環境が変わった」と指摘する。
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中国の脅威
パナマ最高裁は、パナマ政府が1997年にCKハチソン社の子会社(パナマ・ポート・カンパニー:以下PPC)と締結したパナマ運河の両端にある港湾の管理運営契約について、憲法違反との判決を下した。憲法解釈上、国家財産に重大な影響を与える契約は一定の要件を満たす法律による承認が必要であるが、当時政府が準拠した法律はこの要件を満たしておらず法律もそれに基づく契約も無効であり、2021年のさらに契約を25年更新する合意も同様であるとした。
この判決は国内では最終的な決定であり、明確な期限は示されていないが、順次PPCはその業務をパナマ政府が指定したデンマークのマースク社傘下のAPMターミナルズ社に暫定的に引き渡していく必要がある。そして、パナマ政府は憲法上の要請を満たした法律に基づき新たな港湾管理事業の入札を行うことになる。
CKハチソン社の総帥である香港の実業家の李嘉誠は25年3月、中国と香港以外に同社が所有する多数の港湾運営権を米国のブラックロック社が率いるグループに売却する契約を締結した。これは、トランプの再登場によりビジネスがやりにくくなることを見越した判断であり、非常に有利な条件でこの売却契約を結んだとされる。
しかし習近平政権にとっては、中国国籍の企業はいざという時には中国政府の命令に従って行動することが期待されており、パナマ運河港湾管理運営権を含むこの売却契約を許さなかった。これはまさにパナマ運河に関連する港湾サービスを中国政府の影響下に留めるためであり、トランプが主張したようにパナマ運河に対する中国の脅威を実証する動きであるとも言えるが、いずれにせよ当該売却契約は宙に浮いてしまった。
