2026年3月10日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年3月9日

 トランプ政権にとっては、頓挫した買収案に替わり、CKハチソン社にパナマ運河から手を引かせることになるこの判決は大きな成果と言える。しかし、この記事の結論部分に指摘されているようにこの判決をトランプの目指すこの地域で新秩序を目指す先例と位置付けることについては疑問を覚える。

 この記事は、米国の圧力なしに、こうした事態が起こったとは想像しがたいと決めつけているが、97年に遡って契約が無効とされる最高裁判決が出るとは誰もが予測していなかったし、それが米国の圧力を忖度したものと見ることには疑問がある。

中国とアメリカに翻弄され続ける

 この判決は、23年のコブレ銅鉱山コンセッション契約を憲法違反と断じた憲法解釈上の判断基準である、公共財産の適正管理義務、国家主権が契約により制約されないこと、公益評価を含む適正立法手続、国家の裁量権の確保といった枠組みをほぼそのまま適用している。すなわち、パナマ運河判決は、米国の圧力の結果というより、現在のパナマ最高裁が経済ナショナリズムに基づく主権に基づく国家権限の強調、行政・立法手続きの厳格性の要求といった傾向を強く帯びている結果と見るべきではないかと思われる。

 また、トランプにとっては予想外の成果であっても、パナマは今後大きな重荷を背負うことになる。中国政府は強く反発しており、パナマへの投資や融資の抑制、貿易手続き上の嫌がらせといった対応を取る可能性が高く、パナマにとって中国が最大の貿易相手国であることから影響は無視できない。

 結局のところ、パナマ運河についての今回の判決は、トランプの目指す新たな秩序に向けての先例というよりも、大国間の利害のはざまで翻弄される小国が国益を守れるか否かの試金石と見るべきではないかと思う。

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