このコットンの論説は、新STARTの失効の背景とともに米国が今後取り組むべき対応策を指摘している。こうした指摘からは、当面、米国、ロシア、中国の三ヵ国それぞれが核増強を行いつつ、にらみ合う流れとならざるを得ないことが想定される。こうした局面では、お互いの意図の読み違えや誤情報などから核の使用に至るといったことにならないよう、コミュニケーション・チャネルをきちんと機能させることが肝要である。
コットンが挙げている今後取り組むべき諸点のうち、中国、ロシア、北朝鮮という核保有国に囲まれている日本にとって重要なのは、四番目の戦域レベルの核能力である。台湾海峡有事であれ、朝鮮半島有事であれ、紛争が起これば、「核の影」の下で行われる紛争となる。そうなれば、重要なのは、エスカレーション・コントロールである。
大量報復という最後の手段を持っていれば良いというのではなく、仮に相手がエスカレーションの階梯を小分けに上げたとしてもそれに対応できる能力を持つことが抑止か屈服かを左右する。戦域レベルの核能力の拡充の一つとして「核搭載の海上発射巡航ミサイル計画」が言及されているが、これは、日本にとって、非核三原則の「持ち込ませず」をどうするのかに直結する論点である。
核実験の再開はすべきでない
コットンが挙げている今後取り組むべき諸点のうち六番目の、核実験の再については賛成しがたい。米国は、ロシアと中国が隠れて核実験を行っているのではないかと指摘しており、コットンもそれに依拠した主張を行っているが、両国はこれを否定している。そうした中、「それならば、米国も核実験を再開する」と核実験のタブーを米国がぶち壊すことは、米国にとってプラスとは思いがたい。
「核実験を行わない」という事実上の規範が存在することは、各国の中で最も多くの核実験を行い、データの蓄積をしてきた米国にとって有利な状況であって、そうした規範がなくなれば、中国は小躍りして喜ぶであろう。米国としては中露が隠れて核実験を行っているとの主張をデータをもって立証する方向に努力を傾注すべきである。
