2026年3月12日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年3月12日

第二:陸上発射のICBMに複数の核弾頭を搭載しなければならない。新START上の上限を守るために、米国はミサイル一基に搭載する核弾頭を一発のみに減じてきた。米国は、既存のミニットマンIII型ミサイルについて能力いっぱい(3発)まで核弾頭を搭載すべきだ。また、(現在、開発中の)センチネル型ミサイルについても能力いっぱいまで核弾頭を搭載すべきだ。

第三:プルトニウム生産を加速するとともに、国家核安全保障局(NNSA)の施設網におけるボトルネックの脆弱性を解消しなければならない。

第四:戦域レベルにおける核能力を再建しなければならない。これは、核搭載の海上発射巡航ミサイル計画や、追加的な戦術核兵器の欧州、太平洋地域への前方展開を完了するとともに、核搭載可能な超音速運搬手段を開発することを意味する。

第五:核兵器の近代化への見方を変えなければならない。すべてが10年超の計画である必要はない。国立研究所を活用して、核兵器の近代化へスピード感を持って進めるべきだ。

第六:エネルギー省は核実験についてのタブーを転換する必要がある。ロシアも中国もゼロ・イールドの基準を超えた臨界以上の核兵器の実験を行っている。両国は新たな運搬手段も実験している。米国も同じことができるようにすべきだ。

 軍拡競争は既に始まっており、ロシアと中国は10年以上もそれを進めてきている。問題は、軍拡競争が起こるかではなく、米国が競い合いに参加するかどうかである。

 新STARTの失効によって、今とは違う時代に書かれた章は終わりを迎えた。今や、新しい章を書かなければならない。

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米国の新START失効へのスタンス

 日本では、新STARTの失効については、米露間の核軍備管理の仕組みがすべて失われたことに落胆し、軍拡競争に繋がることを懸念する論調が多く、米国の有識者の声としても、そうしたトーンのものが多く伝えられてきた。だが、そうした意見は米国の安全保障コミュニティの議論の中心軸からずれていることを念頭に置く必要がある。

 バイデン政権時の23年、米議会が超党派で設置した戦略態勢委員会(民主党、共和党がそれぞれ同数の専門家を委員として推薦)がとりまとめた報告書は、中露の状況に鑑み、米国としても核増強に踏み切るべきという見解を多数説としていた。核増強に踏み切るためには、新STARTの課している戦略核兵器の数量面での上限は撤廃されなければならない。この論説の筆者のコットンは、米国でもタカ派に属するが、米国の安全保障コミュニティの中では、コットンがこの論説で述べたのと同様の理由から新STARTの失効を歓迎している向きも多いと考えられる。


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