判決に対するトランプの反応は予想されたもので、他の法律を使って同様の効果を生ずる関税措置をとるということで、とりあえず通商法122条に基づき世界一律15%の追加関税を賦課することなった。もっともこれは15%が限度で150日が期限の暫定措置で延長には議会の承認が必要となる。また、発動の要件は、大統領が「大規模かつ深刻な米国の国際収支赤字」に対処するために必要と認める場合とされており、発動の前例はなく、現在の状況がそのような状況であるかについては議論もあり、差止め訴訟が提起される可能性もあるが、IEEPA法よりは勝算が高いであろう。
トランプとしては、大統領に明示的な関税賦課の権限を認める新法の制定を目指したいところであろうが、共和党がかろうじて過半数を確保している状態で中間選挙もあり成立の見込みは低い。結局は、実績のある232条(安全保障上の要請)または301条(不公正貿易の是正)に頼ることになる可能性が高いが、これらは対象が制限され事前の調査を必要とする措置であり、これまでのような迅速で無制限な対応が抑制されることが期待される。いずれにせよ関税を武器とした取引外交は継続することになる。
次に、この判決の経済的な影響であるが、市場は、不確実性が増加したとして困惑し各企業はそれぞれその影響を分析している状況であろうが、市場はこれらのことを織り込み済みであり、より大きな問題は、違法な関税措置により徴収した関税の還付問題である。米国では「主権免責」という法理があり、政府は明示的な根拠法規がなければ金銭支払い義務を負わないとされており、積極的に支払わないのであれば訴訟によるしかない。費用対効果の問題はあるが、訴訟を行うのであれば各企業は不服申し立ての提出等その準備を迅速に行う必要がある。
日本は対米投資の再交渉のカードに
この記事が触れていないのは判決の国際的な影響である。これまで交渉で15%を超える相互関税の圧力を受けていた国にとっては、とりあえずは朗報となる。15%を下回る税率で合意していた国は、困惑しているであろう。
また、日本のように高額の相互関税を免れるために巨額の投資をコミットした国にとっては合意の前提となった条件が無くなるという重大な事情の変更があったことになる。日本側としては、少なくとも、5500億ドルの対米投資決定の前提であったIEEPA法による高関税の可能性が無くなり事情が変更されたと認識している旨を米側に伝え、将来の再交渉に含みを持たせるべきであろう。
