2026年3月10日(火)

プーチンのロシア

2026年3月10日

消えた〝親ロシア〟の指導者たち

 シリア、ベネズエラ、イランはいずれも、ロシアと深い関係を持っていた。

 シリアのアサド前大統領は10年代初め、民主化運動の本格化を受けて市民を徹底的に弾圧。その後、国内で過激派が台頭したアサド氏は追い詰められたが、15年にロシアが軍事介入し、窮地に陥っていたアサド政権は息を吹き返した。その後、ロシアはアサド政権に圧倒的な影響力を持つようになり、シリア国内の軍事基地の利用などを通じ、同国を中東・アフリカ地域における橋頭保として活用した。

 しかし24年に入り、反体制派が首都ダマスカスを制圧した。アサド大統領は辞任を発表し、ロシアに亡命を余儀なくされた。その後発足したシリアの暫定政権は、ロシアと一定の関係を維持しているものの、以前のようにロシアが圧倒的な影響力を行使することはできなくなっている。

 ベネズエラも中南米におけるロシアの貴重な連携相手だった。マドゥロ大統領の前任者のチャベス大統領の時代から、ロシアはベネズエラとの関係を深めていた。反米主義を掲げるチャベス政権に対してロシアは兵器輸出や国営石油企業との協力などを通じて支援を展開し、緊密な関係を築いていた。

 ただ、マドゥロ氏が米軍の特殊作戦で拘束され、米国に移送された際には、ロシアは米国に対する目立った批判を展開することもできず、事実上見捨てた格好となった。ロシア側には、トランプ政権と直接的に対峙することよりも、同政権の動きを事実上黙認した方が得策と判断した可能性があるが、それでもロシアの影響力の低下を強く印象づけた。

圧倒的な存在感

 イランの存在は、ロシアにとりシリア、ベネズエラよりはるかに大きな重要性を持つ。世界第4位の原油確認埋蔵量を持ち、天然ガスは2位のエネルギー大国だ。米国による相次ぐ経済制裁を受けながらも経済成長を続けている。イランは制裁により、原油輸出では欧州などの顧客を失ったが、現在はその大半を中国が輸入している。

 強大な経済力を持ちながら米国と対峙し、独裁体制を敷くイランはロシアにとり重要な連携相手だ。イランと深い関係を持つことは、中東・アフリカ地域におけるロシアの影響力維持に大きな意味を持つ。イランの国内総生産は、シリアの約30倍とされ、その比ではない。

 イランに対する米国の圧力が強まる中、プーチン大統領とイランのペゼシュキヤン大統領は昨年1月には「包括的戦略パートナーシップ条約」を締結した。エネルギー資源や金融、物流・輸送など経済分野を中心に47項目の協力で合意したほか、インフラ面では両国を結ぶ「南北輸送路」の敷設や、イラン国内のブーシェフル原子力発電所2号炉、3号炉の建設をめぐり協議するなど、今後の関係強化を印象付けた。両国はさらに、国連での連携や、第三国による制裁が加えられた場合、その影響緩和に向けた協力も合意した。

 ただこれは、イランの対米けん制にロシアが協力しているという程度に過ぎない。同条約では軍事同盟や相互軍事支援は含まれておらず、形式的な実態もうかがえる。実際、昨年6月にイスラエルがイランを攻撃した際にも、ロシアはイラン側に対して直接的に防衛協力を行った事実は確認されていない。


新着記事

»もっと見る