2026年3月10日(火)

プーチンのロシア

2026年3月10日

 国際舞台では繰り返し自国にすり寄る国々の指導者に賛辞を贈るプーチン氏だが、自国に不利になると判断すれば、即座にその手を引く冷徹な政治姿勢が浮かび上がる。

資源高は続くか

 中東で1億人近い人口と軍事力、膨大なエネルギー資源を持つイランが短期間で屈服する可能性は低い。逆にイランはホルムズ海峡を封鎖し、周辺海域のタンカーなどを攻撃している。

 このような事態は世界的なエネルギー資源高を引き起こし、それは同じ資源国のロシアを利する可能性が高い。すでにプーチン大統領は、対立する欧州諸国への天然ガス輸出を停止すると発言し、イラン情勢を欧州の揺さぶりに利用する姿勢を鮮明にする。

 ただ問題は、米・イスラエルによるイランへの戦争がいつまで続くかという点にある。米国は当初、戦争を4週間程度で終結させる姿勢を見せた。その後長期化も辞さない考えを明かしたが、いずれにせよ数カ月程度でこの戦争が終わるのであれば、ロシアにとっては資源価格の押し上げという点ではメリットは限定的になる。

 一方で、イランでいずれ発足する新体制は従来と全く同じ水準で対米強硬派になるとは考えにくく、ロシアにとってもこれまでのような緊密さを維持できる可能性は低い。シリアのように、一定の関係は保てたとしても、ロシアが中東・アフリカに影響力を維持するうえでは不十分な形になる。

 むしろ今回の戦争は、イランとロシアの関係が実質的な防衛協力などには至らず、イラン産のドローン「シャヘド」の売却など限定的なものにとどまる現実が浮かび上がった。ロシアはウクライナ戦争においては、シャヘドに攻撃の多くを依存していた。現在はすでに、ロシアはタタルスタン共和国でシャヘドの国内生産を行っている。

軍事情報提供か

 一方でロシアがイランに対し、米軍の動静をめぐる情報を提供しているとの報道が米国メディアから浮上した。事実であれば、ロシアはイランに対し、軍事的な損失を伴わない範囲で支援を提供していることになる。

 ただこの程度の協力も、友好国であれば不自然ではない。また、この事実をロシアが公に認める可能性はほぼない。ウクライナ戦争の出口戦略を考えれば、今ロシアは米トランプ政権を表向き、敵には回したくないからだ。イランを一定程度つなぎとめ、かつ戦争が長引くことで資源輸出におけるロシアの影響力が最大限になるように、水面下で活動を展開しているとみるのが妥当だ。

 ハメネイ師のロシア亡命の話が立ち消えになった時点で、プーチン政権はイランの同政権の将来に見切りをつけた可能性もある。ロシアがいう〝友好国〟が、彼らにとり実際にどのような存在なのか、一連の事態は浮き彫りにしている。

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