米国が戦争に踏み切る兆しを察知したため、オマーンのバドル・アル・ブサイディ外相は急ぎワシントンを訪れ、J・D・ヴァンス副大統領と会談した。しかし成果はなかった。
目的不在の戦争の背景にトランプの「成功」体験
こうした見方からすると、トランプのイラン攻撃はやや性急な感が否めない。
米国のイラク攻撃の時も、当時のGWブッシュ大統領は2週間で終了し、体制変換を実現し、その後100日でイラクを近代的民主国家に大変貌させると自信満々で語った。フセイン体制こそ崩壊させたが、その後イラクは泥沼の状態に陥ってしまい、米国は目的を果たせないまま撤退した。
このイラク攻撃開始前に、米国は太平洋戦争での日本に対する勝利とその後の日本の民主主義国としての再生を自分たちの成功例として誇らしげに語ったが、それはどこにでも適応可能な事例なのか。その当事者の日本人の我々にそもそもその実感はあるのか。
そのアフガニスタン・イラク戦争を「終わりなき戦争」と批判してきたのは、トランプだ。20年には「我々は中東で8兆ドルを費やしたが、国内の道路さえ修復していない。なんと愚かなことか」と述べた。
イランが期待するのはまさに戦争の長期化と泥沼化だ。ベトナム戦争の悪夢にまでさかのぼる悪夢である。
トランプ大統領の野心は、いくつかの前例によって後押しされたものだ。20年1月の、革命防衛隊コッズ部隊の対外作戦責任者ガセム・ソレイマニの暗殺、25年6月のイラン核施設3カ所への限定攻撃、そして今年1月のベネズエラ大統領マドゥロの劇的な拉致である。
いずれの場合も、トランプ大統領は従来の慎重論に反して軍事的リスクを取り、それを「勝ち」と見なしてきた。しかも米側は犠牲も出さず、迅速で鮮やかな手口で「MAGA(偉大な米国の復活)」を世界に印象付けた。果たして今回同じようにいくだろうか。
二枚腰の欧州
欧州諸国の反応は当初、米イスラエルのイラン攻撃を国際法違反という見方もあった。英国は2月28日の米国の攻撃に際してインド洋の英軍事基地の使用を認めなかった。スペインはその後も米軍の領空通過や基地使用を認めていない。トランプ大統領はスペインに対して、一切の交易関係を断つと、制裁的な対抗措置をちらつかせて、圧力をかけた。
しかし全体としては、欧州各国は当初極めて慎重な対応だった。フランスのマクロン大統領は米・イスラエル攻撃を主権侵害の国際法違反だと述べていたが、概して英仏独は「地域の安定と民間人の保護」を呼びかけ、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長および欧州理事会のアントニオ・コスタ議長は「最大限の自制」を促していた。
ところが、翌日からイランが周辺アラブ諸国に対して、それぞれの国の米軍施設基地に対して報復攻撃をはじめ、ホルムズ海峡の封鎖を宣言したことから、欧州各国も米国に歩調を合わせる姿勢を強め始めた。英独仏三国はイランが行った「無差別かつ不均衡なミサイル攻撃に対して強い衝撃を受けた」と表明。米国および地域の同盟国と協力する用意があると明確に宣言した。
