2026年3月12日(木)

世界の記述

2026年3月12日

 フランスがしきりに強調するのは、第一に、欧州は米・イスラエルと同じ立場で介入しているわけではないということだ。つまり国連決議もなく、証拠も不確かな国際法上の正統性の乏しい攻撃とは一線を画すという姿勢だ。これはイラク戦争の時と同様の論理だ。「予防戦争」は国際法上認められていない。

 他方で第二に、欧州と湾岸諸国との親しい関係を考慮すると、イランの地域諸国への攻撃を看過することはできない。むしろ防衛的な立場から、こうした諸国への支援は当然だ、という立場だ。この姿勢は西欧諸国が共有するものだ。

日本は見識外交の片鱗を見せておけ

 翻って日米同盟の観点から日本も似たような状況にある。在留邦人の数や歴史的つながりは西欧諸国と比較すべきもないが、原油資源90%をこの地域に頼る日本にとってイランの無差別攻撃やホルムズ湾封鎖はやはり等閑視できない。

 しかしこの地域への深いコミットを国民に説得することは容易ではないだろうし、米国の攻撃の正当性についての議論にどこまで同調する覚悟はあるのか。これは日本だけではなく、西欧諸国を含む国際社会全体に対する問い掛けでもある。

 実際、防衛的措置であることを強調して、空母の派遣まで決定したフランスだが、5日にはイスラエルに激しく攻撃されているレバノンから直接的な派兵要請を受けた。対応の仕方次第では、戦況のさらなる拡大と混乱に巻きこまれることも懸念される。

 筆者自身は米国のイラン攻撃には正当性がないと思う。日本もそれをある程度視野に入れた姿勢を示唆したほうが良いだろうが、トランプを刺激するのも得策とは言えない。高市早苗首相が米国訪問を控えて、この戦争に対する明言を避け、イランの核兵器開発を批判する立場にとどまっているのはリアリズムである。

 しかしそこをもう一歩踏み込んだ対応を世界に示すことができないかとも思う。もちろん中東地域は日本からは遠い。日本国民の関心も原油サプライヤー諸国に対する関心にとどまっているというのが本音のところだ。ただ状況対応型の日本外交の姿勢は少しでも脱したいし、そのよい機会である。

 その方向で考えるとすれば、どこかでこの戦争に対する疑問を提示した方が良い。欧州諸国やイランとの関係を考えた上で、国際社会で良識ある姿勢、見識外交の片鱗を見せておくことだ。

 そのために国連や国際機関をどう使っていくのか。戦争の根拠とその対応についての提案は可能なのか。少し勇気のいることだが、それが「グローバルプレイヤー」に脱皮するための日本外交の次の一歩につながる。

 その最初のプロセスは、これも外交当局や政治家には踏み込みにくいことだが、真の意味でアメリカと「対話」することだ。そうなって初めて日本は本当の「同盟国」だと言えると思う。

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