2026年3月16日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年3月16日

 西側諸国の指導者たちはこの新たな戦争の時代にまだ備えができていないことを認識すべきだ。ウクライナが示すように、自律型兵器が遍在する紛争では、現有のドローンや弾薬の備蓄が急速に枯渇することは明らかだ。しかし、戦時中に生産を増強する西側諸国の能力は現状では素人レベルだ。

 自律システムの習熟と、それらの兵器を大量に製造する能力が、将来の戦争の帰趨を決定づけるだろう。西側諸国はウクライナの最前線で起こっていることから学び、イノベーションを加速させ、次の紛争で要求される規模とスピードで生産を行うために必要な産業基盤を構築しなければならない。

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世界水準に達しているウクライナ

 本件記事は、ウクライナの戦い方を紹介した上で、「新たな戦争」への備えという面で北大西洋条約機構(NATO)が抱える脆弱性を指摘しているが、このことは、ウクライナ軍がすでにNATOに対し重要な貢献のできる存在になったことの証左でもある。

 昨年5月、NATOはウクライナのドローン専門家とともに共同演習「ヘッジホッグ2025」を行い、NATO加盟12カ国から約1万6000人が参加した。同演習では、NATO側の2個大隊で構成するチームを相手に、たった10人のウクライナ側チームが30回「模擬攻撃」を仕掛け、所有の装甲車両17両を「模擬爆破」した、とされている。

 ウクライナのチームは「DELTA」と称する高度な戦場管理システムを使用し、無数のドローンを使って戦場の状況をリアルタイムで把握した上で、AIによるデータ処理・分析を経て、部隊間の攻撃を調整し指揮統制を行ったということだ。

 このような戦い方は、米国を始めとする西側諸国が長年にわたり研究・開発し、また教育・訓練してきた「ネットワーク中心の戦争」(Network-Centric Warfare)の、重要な一側面を構成しており、この演習は、ウクライナ軍が少なくともドローンを活用した「戦術レベルの戦い」において世界水準に達していること、他方、そのような作戦行動においてNATO軍に脆弱性があることを示した。

 これはあくまでも、特定の条件を設定したひとつのシナリオにおける「模擬戦闘」の結果であり、ただちにウクライナ軍が総体としてのNATO軍より優れていることを意味しないが、今後NATOは、ウクライナ戦争の教訓を取り入れて脆弱性の克服に努め、一方ウクライナ軍も、そのためのNATOとの協力の過程で一層の近代化を進めていくことができるだろう。


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