トランプは、米国として、相手国と「同等の立場で」核兵器を実験する権利を留保すると述べた。世界は、米国が核実験を行わなくなった 1990 年代から大きく変わり、シミュレーションやモデル実験を行うことは、核実験の完全な代替とはならない。
米国の核抑止力は、80 年にわたって平和の力となってきたが、核の投げ合いを避けるためには、米国の核戦力が能力と信憑性を備える必要がある。国務省が指摘するとおり、自由世界の防衛を制限してきた「米国の一方的自制」の時代に終止符を打つ必要がある。
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民主党と共和党で揺れる姿勢
WSJ が中国の核実験疑惑を踏まえ、米国としても核実験を再開すべきだと論じている社説である。第二期トランプ政権が核問題でどのような政策を取ろうとしているのかは、これまでトランプ大統領の断片的な発言以外に材料が乏しかったが、この2月になって、ディナノ国務次官(軍備管理・国際安全保障)、ヨー国務次官補(軍備管理・不拡散担当)といった実務担当者によって具体的な政策表明が聞かれるようになった。
主要点は2つで、1つは、中国の急速な核軍拡により、米ロ間のみで戦略核兵器の制限をする新STARTが現在の時勢に適合しなくなっていること、そしてもう1つは、中国とロシアは隠れて核実験を行っており、米国もこれに対応する必要があることである。
このWSJ社説は、この後者の点について賛意を示すものである。具体的に、核実験疑惑を突きつけられているのは中国で、米国は、「20年6月20日」と特定しているが、中国は否定している。
核実験は、米国の安全保障コミュニティの中でも、共和党、民主党の相違、対立が激しかった問題の一つである。冷戦後、民主党のクリントン政権の際、米国は包括的核実験禁止条約(CTBT)の策定作業の先頭に立ち、96年に同条約が採択されたが、米上院では、共和党の反対で批准されなかった。
その後、共和党のジョージ・W・ブッシュ政権はCTBTに目もくれなかったが、民主党のオバマ政権は、CTBTを批准する以外の方法で核実験禁止にコミットする方法はないかを探った。第一期トランプ政権では、核実験の再開を求める声も存在し、同政権下で策定された18年版核態勢見直し(NPR2018)は、「米国は、核兵器備蓄の安定性および有効性を確保するために必要だと判断した場合を除き、核爆発を伴う実験を再開しない」という、核実験再開なしを基本としつつも、核実験再開を主張する勢力にも配慮する表現となった。
