2026年3月30日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年3月30日

 また政権が崩壊寸前であるという兆候もない。1月には数千人が弾圧で亡くなるという大規模な反政府デモを起こしたイラン国民も、現在は身の安全を優先して街頭に出ていない。仮に政権が崩壊したとしても、穏健で敵対的では無い政府への移行が実現する可能性は低い。

 むしろ国家が分裂する危険性が高い。その場合、苦しむのはイラン国民であり、周辺諸国は新たな破綻国家を抱えることになる。

 戦争を継続すれば、より大きなエネルギー危機を引き起こし、世界経済に悪影響を与える恐れがある。そしてトランプ大統領にとってより重要な事は、中間選挙を予定する共和党が敗北する危険性だ。

 一方で戦争を終結させれば、イラン政権は大きな損害を受け、弱体しながらも「生き残ったこと」自体を勝利として宣伝するだろう。結局のところ、トランプ大統領がどのオプションを選んだとしても、トランプ大統領の愚行の代償を払うのは彼ではなく、他の人々だ。

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崩壊しなかったイスラム革命体制

 米国とイスラエル対イランの衝突は、1カ月経過しても解決の見通しが立たない。今回の衝突は数週間ではなく数カ月単位で続くことになると考えられる。

 世の中では、イランのイスラム革命体制は、狂信的な聖職者が支配する神権政治国家と見られているが、現実には極めて理性的、合理的な判断を行っている。軍事衝突で敵わないと見ると、すかさず、ホルムズ海峡の閉鎖で原油価格を高騰させ、中間選挙を控えるトランプ大統領のアキレス腱である米国内のガソリン価格を高騰させるという非対称戦を挑んでいることは、その証拠だ。

 イスラム革命体制は狂信者の集団ではないし、イランは9000万人の人口を抱えることから人材の層も厚く、いくら指導者を殺害してもすぐに後任者がその空白を埋めることができる。

 上記の社説は、「敵であるイランを十分理解していなかったようにも見える」と指摘しているが、今回、米国が開戦劈頭にハメネイ最高指導者を殺害したのは、「斬首作戦」によりイランのイスラム革命体制を一気に崩壊させることを意図したものと思われる。


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