これはベネズエラでの成功の高揚感に引きずられたのだと考えられるが、ベネズエラが一人の独裁者に全ての権力が集中した典型的な「独裁国家」だとすれば、イランは統治機構が整備された「独裁的な国家」であり、最高指導者を排除してもハメネイ師の次男モジタバ師が最高指導者の後継者になったようにイスラム革命体制は崩壊しなかった。
東アジアの安全保障にも影響
さらに、トランプ大統領は一時、「イランとの衝突が『ほぼ終わった』」と述べ、米国がイランと行っている衝突の出口を模索しているかのよう示唆したが、イラン側は、最高指導者の殺害で潰れた面子を回復するまでこの衝突を止める訳には行かない。すかさず、ペゼシュキアン大統領が、イラン側の停戦条件として(1)将来、イランを攻撃しない保証、(2)イランの正当な権利の承認等を提示した。
しかし、これはトランプ大統領には受諾することが不可能な条件である。(1)は、将来の米大統領の手を縛ることになるので米国の政治制度上、そのような約束は出来ない。(2)は、言い換えれば「イランの核開発、弾道ミサイルの開発を認めろ」ということであり、トランプ大統領の戦争目的を否定するので、やはり受諾は不可能だろう。このイラン側の声明は、トランプ大統領が一方的な勝利宣言をしてもイラン側は戦闘を続けるという意思表示と解釈できる。
今回の衝突は長期間の消耗戦となる可能性が高いが、恐らく、イランの弾道ミサイルとドローンの備蓄か米・イスラエル側の迎撃ミサイルの備蓄のどちらかが尽きるまで続くのではないか。米側も、ウクライナにパトリオットを供与したりして弾薬が十分でない可能性が高い。
弾道ミサイル迎撃の切り札高高度防衛ミサイル(THAAD)が最近、韓国から中東に配備転換したことも米軍の懐事情を示唆しているが、今や、この衝突は東アジアの安全保障環境にも影響しつつあることに留意する必要がある。
