2024年11月23日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年7月25日

 今後、米国としては、より率直かつ単刀直入にアジア回帰の焦点が中国であることを認め、論じるべきである。焦点は中国の増大する経済力、軍事力である。そのうえで、米国は国際関係の将来のビジョンを中国が受け入れるように働きかけるべきである。そして、「新しい大国関係」という中国の主張を認め、中国に国際関係の中で責任ある役割を果たさせるべきである、と論じています。

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 「アジア回帰」という言葉は中国を対象にして考えられた用語にもかかわらず、オバマ政権はこれを特定国に向けられたものではないとの立場をとっているため、中国の行動をうまく規制できず、結果的に米国のアジア・太平洋における外交は受け身の立場に立たされている、というのが本論の趣旨です。この点はオバマ外交の弱点をよく衝いており、大方の人々の賛同するところでしょう。

 オバマ自身がこれまで「アジア回帰」について積極的に取り上げてこなかった点からみても、ウエストポイントでのスピーチは特に驚くには値しません。中東、ウクライナ等の新しい状況を踏まえれば、やむを得ない点もあるかもしれません。

 ただし、最近の米国のアジア・太平洋への対応には、東シナ海での防衛識別圏の設定を認めないとの表明、南シナ海での「九点線」の扱いを明確にするようにとの中国への米国の要求、南シナ海での中越対立を「見て見ぬふりをしない」とのヘーゲル国防長官の発言、などを見れば、やや遅きに失した感はありますが、米国の側に一部修正への動きが出てきているように思われます。

 なかでも、オバマの前回のアジア歴訪は日本としても評価できるものでした。特に尖閣について、首脳間の共同コミュニケの中ではじめて「尖閣は日米安保条約の適用範囲」と書き込んだ点は、米国の従来の立場の踏襲であったとしても、中国への明確なメッセージになったものと考えられます。

 なお、本論評の著者たちは、中国の言う「新しい大国関係」という枠で米中関係を処理することを主張しているようですが、この概念の使用は、中国の一方的な「核心的利益」や海洋権益などを相手方に守らせることを前提とするものであり、警戒を要する点です。このような曖昧な用語は不用意に使用しないほうが良いでしょう。

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