社会保障目的税と税額控除の導入
オランダの改革を参考に日本に必要な税・社会保障一体改革(教育も含める)を考える。その基本は、セーフティネットの強化と自助努力、人的投資の拡充と就労促進だ。
今の基礎年金は「年金制度」ではなく、財政調整制度であり、税と保険料が混じり最低保障になっていない。オランダなどの基礎年金はセーフティネットであり、誰でも保障するため、その財源は全額税金である。他方、ドイツなど保険に基づく国では、基礎年金はなく、保険料を負担できない者は最終的には生活保護で対応する。今後、予定通りマクロ経済スライドが機能すると、貧困高齢者が増えることになり、生活保護費がさらに増える。
セーフティネットを拡充しないと、ビジネスなどでリスクをとることが難しい。日本の基礎年金は中途半端であり、世界標準の仕組みにするべきだ。
そこで経過措置を経て全額社会保障目的税で賄う。国民健康保険と後期高齢者医療を統合し(都道府県が保険者)、介護保険を含め目的税(定率)で賄う。現在でも一部の自治体は国民健康保険税を徴収しており同じだ。ただし、高齢者が多い保険者などが不公平とならないように、年齢等で調整する(「リスク構造調整」)。
厚生年金や健康保険組合等は2階部分として、保険原理を重視する仕組みとする。一般財源の投入や被用者保険からの流用は廃止する。健保組合は約1400もあり保険原理に反するので、加入者が選べるようにして集約化する。
雇用保険と労災保険は正規・非正規全てを対象とし、保険料は雇用主が負担する。一定の条件でフリーランスなども加入する。
所得税に関し、所得控除から税額控除に変更するとともに、累進性を高める。資産課税の強化も必要だ。社会保障目的税の負担は税額控除により軽減する(上限設定・給付無)。高所得者に有利な所得控除を廃止すれば財源を確保できる。
こうした改革により財源を確保し、人的投資を拡充する。特にリスキリングや高等教育が重要だ。
教育には外部効果があるため公的支援も是認されるが、無償化は高所得を得られる大卒を税金で支援するので不公平である。国立・私立大の学生の家庭の平均所得はほぼ同じであるにもかかわらず、国立の授業料が低いことも問題である。高等教育も欧州諸国のように無償化すべきとの意見があるが、消費税率を20%超にできるだろうか。
そこで設置者に関わらず機関補助から個人補助へ転換し、授業料の負担を所得連動返還型奨学金で支援する。この奨学金は日本でも導入されているが、世界で初めて導入した豪州の仕組みとは似て非なるものだ。
豪州では費用の一定割合を政府が負担しつつ(自然科学など重要分野は政府の支援割合は半分超)、残りを個人が卒業後の所得に応じて返済するが、日本はそうではない。授業料を引き上げて財源を拡充し、負担は奨学金で軽減する。
低所得者の所得保障と就労支援のため給付付き税額控除を導入する。雇用保険の求職者支援制度と生活困窮者支援制度を統合し就労支援を一本化する。生活保護は就労のインセンティブが乏しいため改革が必要である。同控除で保険料負担を軽減することも考えられるが、扶養など保険制度に内在する問題を解決することはできない。
経済が成長しない限り、国民は豊かになれない
こうした改革は段階的に進める必要がある。特に給付付き税額控除についは、マイナンバーによる所得・資産の把握、不正対策、生活保護の見直しなどが必要であり時間がかかる。
改革の中でも保険料の引下げと社会保障目的税とそれを軽減する税額控除の導入、人的投資の拡充は急務だ。誰でも負担を回避したいが、それでは急速に進む人口減少に対応できない。セーフティネットを強化しリスクをとれるようにする。経済が成長しない限り、国民は豊かになれない。
オランダが改革に成功したのは政策過程にある。政府は連立政権なので合意形成が必要であり、そのために省庁は科学的な分析と政策の評価を行う。審議会は独立性が高く、専門性に基づき助言する。これらは今回の国民会議で特に必要なことであり、人口減少を乗り越えるための改革案を議論してほしい。
