2026年5月8日(金)

World Energy Watch

2026年5月8日

 世界的に脱炭素化が進めば、長期的には石油需要が停滞する可能性がある。このためUAEは石油の価値が高いうちに資源を現金化し、その収入を将来の成長分野に投資したいと考えている。

 特にUAEが重視しているのが、人工知能(AI)産業や防衛産業である。これらは同国が育成を進める重点分野であり、発展には巨額の資金が必要となる。そのため、石油の増産は単に目先の収入を増やすためではなく、脱石油時代に備えた経済多角化の財源を確保するためでもある。

 脱退のタイミングにも、UAEの戦略的な判断がうかがえる。イラン戦争の影響で石油市場が混乱し、ホルムズ海峡の通航も制約される中、UAEは将来の供給再開を見据えている。

 同海峡の通航が正常化すれば、供給不足を補うための需要に加え、各国が放出した石油備蓄を買い戻す動きも強まる可能性がある。その結果、世界市場で原油需要が一時的に高まることも考えられる。その局面でUAEが迅速かつ大量の原油を供給できれば、市場シェアの拡大と収入増を実現できる見通しである。

深まるUAE・サウジアラビアの溝

 UAEのOPEC脱退により、UAEとサウジアラビアの関係は、「協調」から「競争」へさらに傾く可能性がある。両国はこれまで、OPECプラスの枠組みを通じて原油価格の安定に協力してきた。しかし、石油政策をめぐる考えの違いは徐々に広がっていた。

 サウジアラビアはUAEと異なり、原油価格を下支えするため、供給抑制を重視している。この政策志向性の違いは、OPECプラス内で長く調整されてきたが、UAEの脱退によって明確に表面化した。

 さらに、UAEとサウジアラビアの利害対立は石油市場にとどまらず、地域情勢にも広がっている。25年秋以降、スーダンやイエメンなどの地域紛争をめぐって、両国の立場の違いがより鮮明になった。

 また、イラン戦争への対応をめぐっても、UAEとサウジアラビアの方向性は分かれている。UAEは従来、イランを警戒しながらも、実務的な関係を維持してきた。背景には、ドバイが長年、制裁下にあるイランにとっても投資や貿易の重要な拠点であり続けてきたことがある。実際、16年にサウジアラビアがイランとの国交を断絶した際も、UAEは関係を完全には断たず、駐イラン大使を臨時代理大使に格下げする対応にとどめた。

 しかし、米国とイスラエルによるイラン攻撃後、両国の違いはより鮮明になった。UAEは、自国に飛来したイランのミサイルやドローンへの対応として、より強硬な姿勢を取るようになった。貿易、観光、金融のハブとしての地位を守るため、イランに対して一段と厳しい立場に転じたのである。

 これに対し、サウジアラビアは外交交渉による事態の収束を重視している。こうした違いは、安全保障政策においても両国の距離が広がりつつあることを示している。


新着記事

»もっと見る