アメリカ国内では、若い世代を中心に、日本への旅行が大ブームになっているが、彼らの多くは日本での滞在を満喫した後で、複雑な心境になるのだという。それは、あそこまで民度が高く、行き届いた社会なのに、どうして技術革新に遅れて経済が低迷しているのかという根源的な疑問である。
彼らは、そこで人口動態の深刻さ、DXやAIへの遅れ、半導体や電池などでの投資負けなど、日本独特の問題を学び、最後にはGDPの2倍以上という「債務爆弾」を一種の恐怖心とともに理解する。そうした若い世代のアナリストたちが口を揃えて言っているのは、「日本は世界最大の米国債の保有国」であるから、財政破綻が進行する中では、ある時点で「必ず米国債を売ってくる」というシナリオである。
つまり、日本の国債金利高、通貨安がアメリカに連鎖して、アメリカにおける金利の一段高につながるという懸念に発展しているのだ。もっといえば、日本発の金利ショックで、アメリカにおけるスタグフレーションが深刻化するというストーリーである。
円が160円台にタッチし、ここまで大規模な介入を行っても、これに対抗するような売り圧力があるというのは、ある意味で深刻な事態である。そして、本当に円が売られ、日本国債が売られれば、仮に日本政府が米国債を売らずに持ちこたえても、「日本による売り懸念」を材料に、米国債には市場から売りを浴びせられる懸念がある。
対策を講じなければ、通商や安全保障にも影響
これに対する対策は3つしかない。そしてその3つは全て実行する必要がある。1つは「現状において減税は難しい」という国民的合意を作ること。2つ目は、「痛みを伴うものであっても行政改革による歳出抑制、雇用と教育改革さらにDXとAIによる産業構想改革を断行する」ということ。3つ目は「これ以上の円安と債券安を許さないという日米の結束を示す」ことだ。
ベッセント氏の決意は明確であると考えられる。これ以上の円安と日本の債券安を止めて、米国債への連鎖を回避すること、これは米国におけるスタグフレーション防止という意味で相当に強い決意であろう。そして、円安防止というのは、コアなトランプ支持層の政治的心理にも沿うことになる。
仮の話であるが、ベッセント来日において、高市政権が減税を諦めきれず改革に消極的で、結果として日米の乖離が透けて見えるようなら、日本円と日本国債には巨大な売り圧力が殺到するであろう。
さらに言えば、その直後に予定されている米中会談では、米経済を改善する切り札として、米中の通商問題に関して思い切った合意、それこそ日本を孤立に追いやりかねないような合意がされる危険も増す。可能性は少ないものの、AIの開発や利用における米中協調が合意されてしまうと、日本としては経済でも安全保障でも行き詰まる。
そう考えると、今回の危機というのは単に金融の問題だけでなく、通商から安全保障にも絡む危険な転換点になるとも言える。
