今回、中国側は「両岸は同じ家族に属する」と呼びかけ、鄭らを歓待した。今回、南京においては、かつて「日本軍国主義」の暴虐な行動を受けたなどと鄭は発言した。
鄭訪問にあたって、中国側は、10項目の優遇措置を打ち出した。それらは、中台両岸での旅行の解禁、特定地域への相互の航空機乗り入れ、台湾農産物の輸入拡大などである。
中国から見れば、鄭の中国訪問はトランプ大統領の中国訪問の直前の時期であり、米国からの武器購入に慎重な姿勢を取る台湾・国民党をうまく利用して、米国の台湾支援に歯止めをかけたいところであろう。これまでのところ、トランプは「台湾はもっと防衛費を負担すべし」と言ったことはあるが、実際の米国の台湾への武器売却がいかなるものとなるかについては、明言を避けている。
「92年コンセンサス」が使われた意味
なお、頼清徳・民進党政権が米国からの「台湾関係法」にもとづく武器購入については、積極的姿勢を維持していることは、よく知られているところだ。
鄭の訪中において、久しぶりに中台間で「92年コンセンサス」という言葉が使用された。振り返ってみれば、馬英九・国民党政権下で、「一つの中国」とは、「不統」「不独」「不武」(統一せず、独立せず、闘わず)という現状維持策が台湾側の主張だった。
今回、中国がこれを受け入れた形となり、中国の分断工作が明瞭になったと言える。

