イスラム共和国体制を支える既得権益層
イスラム革命から47年を経た現在では、イスラム共和国体制下での特権階層、受益者層、支持者・シンパが形成されている。宗教指導者、革命防衛隊、民兵組織、宗教警察は家族や支持者・シンパも含めれば、1000万人を遥かに超えるのではないか。
イランには大小様々なモスクがあるが、2015年の公式統計では5万8000のモスクがあるという。宗教指導者(いわゆる聖職者)は、上は国家最高指導者から、下は田舎のモスクのイマム、神学校の生徒まで含めれば十数万人規模であろう。
最近メディアでも報道されているように、革命防衛隊や民兵組織は傘下に多数の企業を抱えており、一種の巨大コングロマリットであり、GDPの過半を占めるという分析もある。こうした企業の従業員や家族も体制支持者であろう。
上層部の宗教指導者はイスラムの高邁な理念を国民に唱えながら、裏では巨大利権を独占しているといわれていた。例えばイラン国内では、密輸された莫大な量の米国製タバコが私的ルートで売買されていたが、元締めは宗教指導者と言われていた。闇ルートのビールや焼酎も同様と聞いた。
敬虔なイスラム教徒はサイレントマジョリティーなのか
イランには、信心深いイスラム教徒のフツウの市民が多数存在することは、忘れてはならない。筆者は数えきれないほど多くの敬虔なイスラム教徒に出会った。
テヘラン郊外の小学校の若い男性教諭は、イラン・イラク戦争に義勇兵として参加して負傷したが、子どもたちに英雄として尊敬される熱血教師であった。エルブルズ山脈の麓で日暮れ時に数人のロバに乗った老人がコーランの一節を朗誦しながら山道を降りて来た。取引先の実家は田舎の農家だったが、夕食前に夕陽に向かって家族全員で祈っていた。イラン石油公社の幹部は米国テキサス州立工科大学で石油資源工学を修めたが、留学中も一人で黙々とキャンパスの片隅で礼拝していたという。
いずれにせよ敬虔なイスラム教徒は、イスラム共和国打倒運動からは距離を置くのではないか。むしろ彼らの一部は官製の政府支持集会に参加するのではないか。
イランの命運は中国が握っている
近年中国はイランの原油の大半を引取り、他方でイランが必要とする物資を供給している。米国や西側諸国の経済制裁下でも中国の後ろ盾により経済が成り立ってきた。
イランはロシアやインド、グローバルサウスとも友好関係にある。中国が完全にイランを見放さない限り、米国の経済制裁が続いてもイラン経済は破綻しないだろう。そして石油埋蔵量世界第3位、ガス埋蔵量世界第2位という資源大国であるイランを中国が手放すことはないであろう。
軍事面でも中国とロシアはイランと密接な関係にある。1990年代初頭には既に中国人民解放軍傘下の兵器産業コングロマリットである中国北方工業集団(Norinco)は、テヘラン市内にオフィス兼宿舎を構え多数の技術者が駐在していた。豪邸の大きな部屋に二段ベッドを並べて中国からの出張者を宿泊させていた。また他の中国国営企業の出張者にも、人民元払いで宿代を徴収してベッドを提供していた。中国人コックが常駐して本格的な中華料理を提供していた。
ある関係者は北京~テヘランを結ぶ週2便のイラン航空直行便があるので、機密性の高いミサイルの電子部品や照準器なども注文を受けてから、1週間でイラン側に納入できると自慢していた。同様に北朝鮮製のミサイル関連部品もイラン航空で運ばれていると聞いた。
35年を経た現在ではNorincoにとりイランは最重要取引先になっているであろう。最近もイランの敷設した最先端高機能機雷に、中国製ICが使用されているという報道があった。
ロシアがイラン製のドローンで、ウクライナを攻撃していることは広く周知されている。ロシアはシリアを失ってからイランとの関係を強化している。今年初頭の反政府デモが全国的に激化したときは、最高指導者ハメネイ師がモスクワ亡命の準備をしているという情報もあった。
