2026年5月21日(木)

Wedge OPINION

2026年5月21日

 欧州にとっては、今年の年明けに一気に深刻度を増したグリーンランド領有をめぐる問題が転換点になった。トランプはデンマーク領グリーンランドの所有を求めたのである。これは、NATOの同盟国であるデンマークの主権への重大な挑戦だった。

 米国は武力の使用も排除しないとの姿勢を示し、米国が同盟国に武力侵攻する懸念が顕在化した。欧州は結束してデンマークを支持した。

 その後、トランプが矛を収めたため、グリーンランド問題は小康状態になっている。それでも、欧州にとっては、米国が完全な敵国になりかねない現実が突きつけられた。

 トランプへの懐柔だけでは欧州の利益を守ることができないとの認識が強まっている。この切迫感は、日米関係ではまだ経験していない。

すべてはディール
同盟国に厳しいトランプ

 トランプ政権の対外政策をあらためて振り返ると、同盟国との間の共通の価値や利益を軽視する姿勢が顕著だ。すべては取引であり、相手の弱みに付け入ることに関しては一貫性がある。

 同盟国の多くは安全保障でも経済でも米国への依存度が高い。これは、それら諸国の脆弱性であり、トランプはこれを最大限に使おうとする。

 その結果、皮肉なことに米国は、ロシアや中国に対するよりも同盟国により厳しい姿勢をとる。ロシアや中国の米国への依存度は限定的であるため、米国が使えるカードが少ないのである。

 ただし、そうした脆弱性自体はまったく新しくない。以前からそうだった。トランプが従来と異なるのは、同盟国が有する脆弱性に着目して圧力をかけることをまったく躊躇しないことだ。

 そのため、トランプ政権による関税措置に対し、投資の約束などで懐柔しようとしても、一度の譲歩で効果が持続する確信を持つことは難しい。また別の要求が出てきてもおかしくないからである。それもディールだということだ。

 加えて、イラン攻撃に代表される国際法や国際規範、国際機関無視の姿勢である。トランプ政権には、もはや歯止めは存在していないようにみえる。

 この点で、米国の位置付けは、ロシアや中国に近づくことになる。米中ロのような大国にとって、国際法や国際規範などは、自国の行動を縛る不都合なものだ。自らの行動の自由のために、制約は少なければ少ないほどよい。


新着記事

»もっと見る