米国との関係を保ちながら
「自律性」の向上に取り組む
日本では第2次トランプ政権発足当初、米国が戦略的重心をインド太平洋にようやくシフトさせることへの期待があった。
しかし、1年半近くがたって、それはまったく実現せず、近々実現する見通しもほとんどない。25年は、ウクライナ戦争とガザの停戦・和平への取り組み、そして今年はイラン攻撃と、結局のところ、欧州・中東の問題にエネルギーを割き続けてきたのがトランプ政権だ。
米国がインド太平洋地域以外への関与に忙殺されることは、中国にとっては好都合である。精密誘導兵器や防空システムの迎撃弾は在庫水準が危機的なレベルにまで低下している。製造能力の拡大も追いつかない。
さらに、イラン攻撃に傾注している間、米国は中国との緊張を高めることを避ける必要がある。レアアースの供給などがいわば「人質」になり、米国の対中カードも乏しい。
同時に、米国によるウクライナ支援はほぼ終了している。今日でも、インテリジェンスの提供は継続しているとみられるものの、イラン攻撃の開始以降は、「ウクライナどころではない」状況が顕著である。NATOは今年7月にトルコの首都アンカラでの首脳会合を予定しているが、イラン攻撃が続くようであれば、「NATOどころではない」中での開催になる。
欧州では、安全保障面での「自律性」向上が急務になっている。通常戦力分野での米国の欧州関与の度合いが低下することは、既定路線である。トランプ政権は、拡大核抑止については提供を続ける意思を示しているが、通常戦力による防衛と核抑止は、本質的に不可分であり、後者のみを維持するのは難しいだろう。
米国が関与を縮小する分を欧州が代替することは不可欠になり、これをいかにスムーズに進められるかがNATOにとっては重要な課題になる。
その場合でも、米国とあえて敵対しないことは引き続き求められる。トランプ政権が相手だとしても、欧州も日本も、中国やロシアとよりは、米国との間でより多くの価値と利益を共有しているからである。加えて、トランプ政権だけが米国ではない。
社会全体としての内向き傾向は、今後も続く可能性が高いものの、同盟国間の協力関係という観点では、トランプ後に再建できるものを少しでも多く残しておく必要がある。日本と欧州は、そのための準備を怠らない責任を負っている。
