こうした中、クーデター後に発足したマリ軍事政権とフランスとの関係が悪化し、またマリ国内で反仏感情が広がったことで、テロ対策協力が徐々に縮小した。これを受け、欧州各国の特殊部隊で構成されたタクバ作戦部隊は22年6月に活動を停止し、フランス軍も同年8月にマリから完全撤退した。23年12月には、国連マリ多元統合安定化ミッション(MINUSMA)も撤収するに至った。
JNIMの現在の体制は、主要構成組織であるアンサール・ディーンおよびマーシナ解放戦線が主にマリで活動する一方、ブルキナファソでは他の過激派組織、アンサール・イスラームとハニーファ旅団と密接に連携しているとみられる。そしてブルキナファソにおけるJNIMの軍事作戦は、マーシナ解放戦線が北西部から南西部、アンサール・イスラームが北部から東部で、ハニーファ旅団が東部から南東部でそれぞれ行っている。
こうしてブルキナファソでの治安の弛緩を最大限に利用し、トーゴ・ベナンの北部地域への越境攻撃を繰り返し、新たな活動地の開拓を試みている。今後、ベナンやトーゴでのJNIMの主戦場がこれまでの北部地域から徐々に南下していくことが懸念される。
マリ軍を支えるロシア部隊
フランス軍や国連平和維持活動(PKO)のマリ撤退以後、マリ軍事政権が治安維持で依存を強めているのが、ロシアの部隊である。マリでは、ロシアの民間軍事会社「ワグネル」が21年末ごろから活動を本格化させ、マリ軍に対して対テロ作戦の支援を行ってきた。
ワグネルは14年の創設以降、ロシア政府の意向に沿う形で活動範囲を広げた。ウクライナ東部への関与を皮切りに、シリアやリビア、アフリカ諸国へ進出し、各国の政治情勢や地域紛争に大きな影響を及ぼしてきた。
しかし、22年に始まったウクライナ戦争でロシア軍の戦況が悪化すると、ワグネル創設者のプリゴジンは、ロシア政府や軍指導部への批判を強めていった。そして23年6月、ワグネルはロシア国内で武装蜂起を起こした。蜂起は短期間で収束したものの、その約2カ月後の同年8月、プリゴジンが搭乗していた航空機が墜落し、本人を含むワグネル幹部らが死亡した。
指導者を失ったワグネルは、その後、ロシア国防省の管理下に再編されていった。その受け皿となったのが、「アフリカ軍団」である。アフリカ軍団は、ロシアのユヌス=ベク・エフクロフ国防次官や、軍参謀本部情報総局(GRU)のアンドレイ・アベリヤノフが関与する形で23年後半に整備された組織とされる。
