2026年5月25日(月)

World Energy Watch

2026年5月25日

マリの鉱物資源の掌握に動くロシア

 ロシアにとってマリは、アフリカの半乾燥地・サヘル地域における影響力拡大の重要拠点である。経済面でも、22年から25年にかけて、ロシア側はマリから治安サービス契約料を受け取ってきたとされる。さらに、ロシアのマリ関与には、金やリチウムなどの鉱物資源分野への関与を広げる狙いもある。

 金はマリ経済の中核であり、24年には同国の総輸出の約80%を占める最大の輸出品だった。米地質調査所(USGS)によれば、マリの金埋蔵量は約800トンと推定され、南アフリカとガーナに次ぐアフリカ第3位の規模である。また米商務省によれば、マリは24年に51トンの金を生産し、手掘り採掘による生産も年間最大60トンに上るとされる。

 マリには金に加え、リチウムやウランも埋蔵されている。アルジャジーラがマリ国立地質鉱山局の推計として報じたところ、22年時点で同国には58億トンのリチウム、1万1000トンのウランが存在するとされる。

 リチウム開発は南部シカソ州やカイ州などで進み、グラミナ・リチウム鉱床には2億トン以上のリチウム資源がある。ウラン探査は北部キダルやファレアに集中している。

 こうした資源ポテンシャルを背景に、ロシアは、鉱物資源やエネルギー分野での関与も強めている。ロシア国営原子力企業「ロスアトム」傘下のウラニウム・ワン・グループ(Uranium One Group)は、マリ南部ブグラ地域でのリチウム開発に向け、24年7月にマリ政府と覚書を交わした。また、ロスアトム傘下のノヴァウィンド(NovaWind)は、首都バマコ近郊サナンコロバでの200メガワット(MW)級太陽光発電所の建設事業を担う予定である。

 さらに、ロシアとマリは25年6月、「原子力の平和利用」に関する政府間協定を結んだ。同協定は、原子力発電、人材育成、研究、制度整備などの協力基盤を整えるものだが、ロシアとの原子力協力が将来的にマリのウラン資源やエネルギー分野へのアクセスを広げる足掛かりとなる可能性がある。

 こうしたロシアによるマリの鉱物資源確保の動きを受け、JNIMは今後、ロシア人への敵意をさらに強めていく可能性がある。実際、隣国ニジェールでは24年7月、JNIMがロシア人の地質調査会社関係者2人を誘拐した事例がある。翌月、JNIMが犯行を主張する約2分間の動画「ロシア人捕虜2人からのメッセージ」を公開した。2人は金鉱を訪れていた際に連行されたとみられる。

 この事案は、JNIMがロシアの軍事的関与だけでなく、資源開発に関わるロシア人や関連企業も攻撃対象とみなしていることを示している。マリでロシアが金、リチウム、ウランなどの重要鉱物分野への関与を深めれば、JNIMはそれを「マリ軍事政権を支える経済基盤」と位置づけ、鉱山や輸送路、技術者、警備部隊を標的とするリスクが高まるだろう。このため、ロシアのマリでの資源戦略は、JNIMとの対立をより一層深刻化させる恐れがある。

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