第三に、供給網の透明性向上と調達先の多角化を進めること。特定地域への過度な依存を回避し、代替供給国からの天然ゴム品質評価を平時から実施する。
第四に、天然ゴムの海外依存度を低下させるための先端材料研究への投資を強化すること。高分子科学、人工知能や量子コンピューティングの進展は、従来の天然ゴムに代わる革新的材料の開発を加速させる。
総じて、中国による海洋支配は単なる領域支配の問題にとどまらず、重要資源の供給網を遮断することで米国の経済・軍事基盤に圧力を加える可能性を秘めている。天然ゴムは、現代産業と軍事力を支える不可欠な基盤資源である。米国は、海上交通路の安全確保のみならず、天然ゴム供給網の強靱化を国家安全保障政策の重要課題として位置付ける必要がある。
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日本が持つ深刻な側面
本稿は米国の天然ゴム供給リスクを論じたものでありながら、その問題提起はむしろ日本にとって一層深刻な意味を持っている。第一に、日本は米国以上に天然ゴムの供給途絶に対して脆弱である。米国は世界有数の農業大国であり、本稿に言及のあるグアユールやTKタンポポ等の代替天然ゴム生産を国内で拡大する潜在力を有す。ところが日本は国土・気候条件の制約から天然ゴムの国内生産が事実上不可能であり、その大部分を東南アジアからの輸入に頼っている。
したがって、マラッカ海峡やシンガポール海峡を通過する海上交通路が遮断された場合、天然ゴムの供給途絶で日本経済が受ける影響は米国以上に直接的かつ深刻となる可能性が高い。
第二に、現下の日本の産業構造は天然ゴムへの依存度が極めて高い。日本は世界有数の自動車生産国であり、また建設機械、航空宇宙、医療機器等の分野で国際競争力を有している。
これらの産業は高品質な天然ゴムを不可欠な原材料として用いている。とりわけ自動車産業は日本の輸出と雇用を支える基幹産業で、天然ゴム供給の混乱は単なる一業種の問題でなく、日本経済全体の競争力に直結する課題である。
第三に、天然ゴム問題は日本の安全保障環境の課題と共に、海上交通路の安全確保の問題の深刻さをも提起している。日本はエネルギー資源のみならず、鉄鉱石、石炭、穀物、天然ゴム等多くの戦略物資を海上輸送に依存している。
