2026年6月25日(木)

未来を拓く貧困対策

2026年6月25日

加害者プログラムの内容とモニタリングの必要性

 社会的な成功者が、自身の価値観を変えるのは容易ではない。

 「これまでの考え方で成功してきた人たちですから、その価値観を手放すのは血のにじむような努力が必要で、本人にとっても大変にしんどいプロセスです。だからこそ、一朝一夕にはいかず、長い時間がかかります」

 また、本人の努力だけに任せるのではなく、周囲や組織が「しっかりと受講をモニターする仕組み」が不可欠だという。

 「以前参加していた国会議員は、所属する党の命令で出席を厳しく監視され、逃げられない状況下で通い続けました。スポーツ界や企業組織も同様です。暴力を起こした人物を単に抹殺するのではなく、組織が更生プログラムへの出席率や変化を常にモニタリングし、一定期間を経て変化が認められた場合には『再起の場』を提供することが有効です」

 今回の巨人軍の事件に引き寄せるなら、球団として阿部前監督に加害者プログラムの受講を約束させ、その変化を組織が責任をもってモニタリングしていくと公に宣言していれば、監督辞任というドラスティックな決断まで至る必要はなかったかもしれない。単に排除するのではなく、組織が責任をもって更生に伴走するシステムを構築することこそが、暴力の隠蔽を防ぎ、一度の失敗で人間を社会的に抹殺しない社会をつくる鍵となる。

加害者プログラムの具体的な内容

 実際のプログラムは、どのような形式で進められるのか。吉祥氏はその詳細をこう明かす。

 「プログラムは1回2時間で構成されています。前半はそれぞれの日常を振り返り、後半は教材を使って理論的にDVの構造や自身の行動背景を分析・学習します。参考にするための課題(宿題)を設定し、次の回でその実践結果をグループ内で発表し、お互いに考察し合います」

 現在、同氏のもとには約50人が在籍しており、毎回20人ほどが参加している。年齢層は20代から上は78歳までと幅広いが、ボリュームゾーンは40代から50代の働き盛りの男性たちだという。

 プログラムを「卒業」する基準はどこにあるのだろうか。

 「卒業の基準は、本人が決めるのではなく『パートナーがOKを出したかどうか』です。毎週通って52回(約1年)以上が経過した段階で、パートナーが改善を認めれば卒業となります。本人が『もう変わったから辞めたい』と言っても認められません」

 実際には、大半の人が3年以上通い続けており、最も長い人では12年間通っているケースもある。費用は1回3000円(月額約1万2000円)だが、経済的な理由で中退してしまう人もいる。加害者プログラムは、単体で完結する魔法の仕組みではない。

女性への支援とパートナーシップ

 加害者だけでなく、被害者側である女性へのアプローチも同時に行っている。

 「女性向けのプログラムも実施しています。被害を受けている女性の中には、『自分の手際が悪くて夫をイライラさせてしまった』と、暴力を容認し自分を責めてしまう人が少なくありません。家庭内に圧倒的な主従関係がある場合、どちらか一方だけの意識を変えても関係性は良くなりません。女性側も『それはひどい』『言い過ぎだ』と毅然と言えるよう、教育を通じたサポートを同時に行うという『両輪のケア』が重要です」

 また、本来は家庭のキーパーソンである母親が、夫の機嫌や「子育てができない母親だと評価されること」を恐れるあまり、子どもの喧嘩を微笑ましく見守る余裕を失っているケースも多いという。

 「父親・母親への対応に加え、将来的には児童相談所や民間NPOと連携し、子ども自身のケアまで包括的にカバーできる仕組みが必要だと感じています」


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