「この10年くらいでしょうか。北京や上海など大都市の中華料理のレベルの向上は目覚ましいものがあります。超高級な店ではない、そこそこの店でも、料理に対する強いこだわりがあり、見た目も含めて洗練されてきています。顧客も、焼き方などで、少しでもおかしいと感じる点があれば、率直に店員に注意します。そういうやりとりの結果、レベルアップしたと思います。
日本では、よほどのことがない限り、お客さんはお店に直接文句を言わず、黙って食べるか、残して帰るでしょう?そういう点で、中国の顧客はとても厳しいです。その結果、鍛えられて、美味しい店が増えたのではないか、と個人的に感じています」
故郷の味、中華風揚げパン「油条」
さらに、張さんは故郷に帰ったら、真っ先に食べたいものがある、と教えてくれた。それは高級な中華ではなく、屋台の素朴な食べ物、油条(ヨウティアオ=中華風揚げパン)だ。小麦粉の生地で細長く成形し、油で揚げたもので、外側はカリっと香ばしく、中はモチモチとしている。中国、台湾、香港など中華圏で朝食やおやつとして伝統的に食べられているものだ。
張さんは自宅の近くで久しぶりに油条の屋台を見つけ、買って食べたところ、その美味しさに感動した。そして、懐かしさで胸がいっぱいになり、涙が出そうになったそうだ。
張さんはいう。
「60代の私にとって、幼い頃によく食べた油条は故郷の味。おふくろの味といってもいいものです。日本でも中華食材店などで買えるようになったのですが、中国の屋台で売られている油条とは全然違うもので、日本では絶対に買えないもの。中国は経済成長し、再開発で街並みはずいぶん変わり、古い店はなくなりましたけど、まだ、こういう屋台が少しは残っている。それがとてもうれしいんです」

