出身地だけで好みを判断するのは難しい
このCさんのように、中国出身でも、辛い中華料理は苦手という中国人は、実はかなりいる。ざっくり言うと、中国の沿海部(山東省、江蘇省、浙江省、福建省など)は辛くない中華料理が多いが、内陸部は比較的辛い料理が多い。だが、同じ内陸部でも、雲南省のように、辛くない料理が多い地域もあるし、同じ省の中でも、エリアによって「この地方は辛い」「この地方は辛くない」など細かく分かれている。そのため、出身地を聞いただけでは、その人の好みを判断できない。
日本でも同様だ。たとえば同じ愛知県の三河地方と尾張地方では食文化に違いがあるだろうし、筆者の出身地である山梨県は「ほうとう」が有名だが、筆者の故郷の町では「ほうとう」を食べる習慣はない。だから、初対面の挨拶で「やはり、ほうとうをよく食べるんですか?」と聞かれると、戸惑ってしまう。その都道府県、あるいはその町に実際に行ってみないとわからない食文化や食習慣が存在する。
狭い日本でさえそうなので、日本の25~26倍もの面積がある中国には、日本人には想像もできないくらい多様な食文化が存在する。そこに個人差、年齢差なども加わるため、一口に「この人は〇〇省の出身だから、きっと辛いものは得意(あるいは苦手)に違いない」と一方的に決めつけることは到底できない。家族の中で自分だけ、なぜか辛いものが得意(あるいは苦手)という違いもあるだろう。
だが、人間はつい出身地や年齢、経歴などでその人を見てしまい、ステレオタイプで判断してしまいがちだ。考えてみると、これは中華料理に限らず、「中国」や「中国人」を見るときにも当てはまるし、他のことでもそうだ。CさんやDさんとの食事会の席で、筆者はふと、そんな「当たり前のこと」に改めて気づかされた。

