破られた合意、見え透いた言い訳
ニホンウナギに関しては、生息国である日本・中国・台湾・韓国の4者間での自主的な取り決めがある。14年に合意されたもので、「養殖池に入れる稚ウナギの数量を直近の13/14年漁期水準から2割削減する」という内容となっている。以降4者は毎年1回「ウナギの国際的資源保護・管理に係る非公式協議」を開催して、漁獲量や養殖池への稚ウナギ池入れ量などデータと意見を交換している。
この「2割削減」は、同14年に国際自然保護連合(IUCN)がニホンウナギをレッドリストに掲載し、絶滅危惧種に指定したことが一つの引き金となっている。IUCNで絶滅危惧種指定された場合、IUCNと類似した掲載基準を有するワシントン条約でも附属書に掲載されて規制される恐れがある。
「ワシントン条約のような外部介入が入る前に何とかしないといけないという見方では一致」(水産庁担当者発言)した関係各国が設けたのが「2割削減」合意である。それまでは不漁に喘いでいたウナギ稚魚の採捕量が直近の13/14年漁期(13年11月~14年5月)にはたまたま急増、これを基準にすれば、「2割削減」の値を超える可能性は少ない。「結局、各国が“笑顔”で終われる合意になった」と業界関係者は語っている。
ところが、25年に中国では近年と比べると極めて多くの稚魚が採捕された。同25年6月に開催された日中のウナギ取引業者間の会議で中国側は、24/25年漁期に合計85トンの稚ウナギが養殖池に池入れされたと報告している。
「2割削減」合意による中国の上限値は36トンであり、24/25年漁期の池入れ量はこの値の2倍以上である。今年開催された日中のウナギ取引業者の会議でも中国側は40トンの稚ウナギを養殖池に投入したとしている(日本養殖新聞2026年4月25日)。上限値が全く守られていない。
この問題について今年6月末に開催された「ウナギ非公式協議」の場(報道など外部には非公開)で日本が中国に対して昨年漁期の稚ウナギ池入れ量の提示を求めたところ、中国は「現在データ集計中のため回答できない」と返答している。中国側の民間の取引業者がデータを有しているにもかかわらず、政府が同じデータを集計中というのは極めて考え難い事態と言える。これに対して日本側(=水産庁)もとただちに開示を申し入れるどころか、是正措置を来年話し合うことで折り合いをつけている。
加えて、ニホンウナギ資源が回復傾向にあるとして、上限値を「科学的根拠に基づき池入れ数量上限を見直そう」と発言、枠の積み増しをリードしている。上限値を上方修正すれば、枠に達することはないし、問題になることもない。ある意味最も簡単な問題の解決方法である。


