2026年7月29日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年7月29日

 では具体的に、「デルタ」の何を学ぶべきか。それは、あらゆる情報の「統合」だ。5月12日、米陸軍のドリスコル長官は、ウクライナの「デルタ」が「全てのドローン、センサー、発射プラットフォームを単一のネットワークに完全に統合している」と絶賛し、「米国のはそうなっていない」と述べた。

 ペトレイアスが指摘する台湾のシステムはもっと問題が多い。ウクライナの「デルタ」に相当する台湾の指揮統制システムとしては、陸・海・空の各作戦部隊をネットワークで結び、リアルタイムで戦況共有する「迅安系統」があるが、これは96年の「台湾海峡ミサイル危機」を契機として米国の Link-16 をベースに構築されたもので、台湾の独自開発ではない。

 よって主要なコンポーネントや技術を米国に依存しているため、台湾独自の改修が難しく、米国との契約が必要になる。カネと時間がかかる上に、米国自身が抱える問題がそのまま反映されることになる。

台湾での〝改革〟

 しかしながら台湾においても、頼清徳政権はウクライナの「デルタ」を強く意識して、台湾独自の指揮統制システムの開発に取り組んでいる。その一つが多層防空システム「台湾の盾」だ。これは既存の「迅安系統」をベースにしながらも、陸・海・空、宇宙、サイバー、AI の多領域を網羅し、全てのレーダー、ミサイル、防空アセットをAIや最新のIT技術で統合し、飛来するミサイルの迎撃につき最適解を与えてくれるシステムとされている。

 最後に、ウクライナが今日運用する戦場の情勢認識・集約・共有システムは、ソ連において、80年代に当時のオガルコフ参謀総長が提唱した「軍事革命」の中で、その必要性が説かれていた。ソ連時代に追求されていた戦場の情報集約と共有システムの開発という目標が、ロシアにおいてではなく、ウクライナにおいて達成されたことは、ウクライナがソ連的国家体制と決別し、民主主義的体制を追求してきたことと無関係ではない。そしてそれが今、ウクライナを優勢に導く原動力の一つとなっているのである。

 
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