高市政権が誕生してからも、高市首相、李大統領の下でも両者は互いに往来を重ねるシャトル外交を進めた。日中関係が著しく悪化してもなお、両首脳はそれを意に介さず堂々と日韓関係を進めた。これは双方の英断と評価してよい。首相の地元奈良、李大統領の出身地安東での会談は、実に温かい雰囲気に恵まれた。
日韓の安全保障に必要な
「相互承認」の精神
日韓はどのような関係を構築していくべきなのだろうか。これまで報道で注目されたものは、日本が多くの安全保障パートナーと結んできた物品役務相互提供協定(ACSA)を韓国とも締結するかどうかである。だが、これにこだわる姿勢は望ましくない。
韓国では、一般的にACSAで約束される内容と異なり、自衛隊との本格的協力を始めるかのような印象がすでに形成されてしまっている。李大統領も「必要性は認めるが、国民感情のため現在受け入れるのは難しい」と語っている。そのような状況の中で正面突破にこだわれば、日韓協力に否定的な勢力に利用されるだけだ。
代わりに追求すべきは、ACSAと同等の機能を個別に積み上げ、現在は次官級にとどまる日韓の外務・防衛協議(2プラス2)を大臣級に格上げするなど政治的障害が比較的低いものでよい。
小泉進次郎防衛大臣と安圭伯国防部長官の強固な関係により、既成事実はすでに積み上がり始めている。韓国空軍の特殊飛行チーム「ブラックイーグルス」への日本側の給油協力はその一例だ。イラン危機の際には、日本政府の手配した航空機に韓国人が、韓国政府の手配した航空機に日本人が搭乗した。それを批判する世論はほぼなかった。名を求めず実を取る。この順序が、いまの日韓には合っている。会談を重ねれば、科学技術協力や防衛産業における協力も自然に進展をみせるだろう。
さらに、筆者は日韓が相互の立場を認め合う「相互承認」の精神が重要だと考えている。
日本からすれば、韓国には日本の安全保障努力を正面から理解してほしい。今年末の国家安全保障戦略などの策定に向けて、日本政府は「新しい守り方」としてサイバーやドローン領域を含めた能力の向上、さらに中露の海洋進出著しい太平洋において防衛施設の充実を図ろうとしている。
中国の軍拡への当然の対応だが、中国は日本の防衛力強化を「新型軍国主義」だと批判を続けている。こうした言説はグローバルサウスの一部に影響を持ち始めている。韓国が「こうした日本への批判は当たらない」と理解を寄せることは、中国による認知戦への最良の反論となる。
もちろん、日本も韓国の懸念と対応に理解を深めていくべきだ。露朝関係に加え中朝関係も強化されている中、韓国の安全保障環境が悪化している。韓国が米国の了解を得て原子力潜水艦の取得に動くことも問題視には値しない。

