永続的でない関係性
日本はこの好機を逃すな
制度化の対象は安全保障に限らない。経済では、SKグループ会長、大韓商工会議所会長の崔泰源氏が唱えるように、共同パートナーとしての日韓という大きなビジョンがあってよい。安東で両首脳が合意したように、エネルギー協力は有望であり、液化天然ガス(LNG)や原油、さらに水素、アンモニアの共同調達、電力インフラでの協力を視野に入れられる。隣国間の協力は効率がよく、まさに理にかなっている。
韓国外国語大学の李昌玟教授は、日韓に豪州、カナダという資源国を加えた「JACK」で政府枠組みをつくるべきだと提案する。両国が重視する経済安全保障の取り組みを踏まえれば、これも検討に値する。
韓国は環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)への加盟方針を固めつつある。福島県産水産物などの扱いを巡って、日本側には懸念もある。こうした問題でも両者の立場を正面からぶつけることなく、協力できた時に得られるシナジーという大きな絵から、実務的な協力をまず進めるべきだ。
社会レベルでも、大学間の単位互換やインターン生受け入れを円滑化することや、入国管理の恒常的な簡素化を推進すべきだ。国交正常化60周年の際に設けられた双方のパスポート保持者向けの専用レーンは非常に好評だった。
さらに両国では若い世代を中心に、互いの文化に惹かれあい、日本語、韓国語を熱心に学んでいる人が多い。言葉や文化を学ぶためのすそ野の広い奨学金を大胆な人数規模で創設することを、民間募金も含めて考えても良い。
官僚レベルの日韓関係も実はすこぶる良好だ。米中両国への対応から経済社会問題まで、日韓が抱える問題は驚くほど似ており、制度や社会構造にも共通点が多いため、建設的な議論ができる。
7月末、筆者は、34年にわたり両国の政治家や有識者が多数集結する日韓フォーラムに出席し、基調報告をする機会に恵まれた。今がピークかもしれないからこそ、協力への勢いを制度としてためていくべきであり、それこそが信頼を育み、未来に向けた責任を果たすことになると力説した。フォーラムでは歴史認識を巡る応酬もあったが、関係発展に前向きな議論も多かった。また、従来は日韓問題の「専門家」が多かった日本側の出席者も、他分野の識者や若手ジャーナリストが加わるなど、良い兆しが出始めたように思う。
問題は、この日韓関係がいつまで続くかだ。韓国側は、最近ソウル市長選を落とすなど政治局面が厳しく、李大統領が「進歩らしい」外交へ舵を切る可能性がある。日本の政治も韓国との協力重視を貫けるかは不透明なところがある。
だからこそ、良好な今のうちに、互いの立場を理解した上で物事を進められる土壌を残しておくべきなのである。共通の不安が開いたこの機会を、使い切れるか。サイクルが良く回っている時に機会を失ってはならない。
