2026年8月27日(木)

スポーツの新潮流

2026年8月27日

部活動の「地域展開」で
変わりつつある競技環境

 こうした中、高校年代へつながり、幅広い層がスポーツに打ち込んできた中学の部活動で、国は大改革に乗り出した。それが「部活動の地域展開(地域移行)」である。

 日本で長らく学校教育の一環として教員が担ってきた部活動指導を、地域のスポーツクラブなどが担い手となる仕組みで、全国の公立中学で、まずは休日が対象となる。平日はそれぞれの学校で活動していた生徒が、休日になると、地域のクラブに集まって合同で活動するような形態がイメージしやすい。23年度から全国のモデル校が実証事業に取り組み、31年度までを「改革実行期間」と位置付ける。将来的には、平日も含めた完全移行へ進んでいくことが想定される。

 この制度には長短いずれもある。

 通学区域の中学でやりたいスポーツの部活がない場合や、学校単体ではチーム編成が難しい団体競技においては、複数の学校の生徒を地域単位で受け皿をつくることで、選択肢の可能性が広がる。また、競技経験の有無に関係なく割り当てられることもある顧問教員ではなく、外部の専門的な知識を持ったコーチの指導を受けることができる。

 ただし、地域展開には別の狙いがある。休日を部活動指導に割くことが長時間勤務につながっていた教員の働き方改革の一環でもある。学校=教員がほぼ無償で行っていた部活動の受け皿が地域へ移った場合、保護者には、新たな費用負担が生じる可能性があるのだ。

 小学生以下の子ども向けのスポーツスクール事業を手掛け、7万人超の会員を抱えるリーフラス(東京都渋谷区)は、いち早く部活動の地域展開の担い手に名乗り出た。

 東京都港区とは23年4月、区立中学の全10校の運動部、文化部の113部活で指導業務委託契約を締結。同社による運営の管理・監督のもと、指導者は公募で集まった教員志望の大学生や主婦、リタイア層に加え、働き世代も担う。港区教育委員会によれば、財源には税金が充てられ、地域展開に伴う新たな保護者負担はゼロとなっている。

 地域展開の制度では、部活動指導にやりがいを感じ、休日も指導をいとわない教員は兼業という形で報酬を得て指導を続けることができる。

リーフラス代表取締役の伊藤清隆(WEDGE)

 リーフラス代表取締役の伊藤清隆さんは「地域展開を、『部活の民営化』と捉えると、5000億円規模の巨大市場が新たに誕生することになる」と語る。その上で「参入する企業には、指導者のハラスメント防止などの研修実施や、生徒がけがを負った場合の保険などに対応するほか、指導者が体調不良などで休む場合には、教えるスキルを持った社員がカバーするなどの責任も生じる」と強調する。

 一方、保護者の負担をめぐっては、自治体の財政状況などによって「格差」が生じかねない。支援団体の認定NPO法人キッズドア(東京都中央区)が26年5月に公表した調査では、困窮家庭の8割が、部費や送迎などで負担が増したと回答した。SSFが24年に行った自治体向けの調査でも、「スポーツ庁に取り組んでほしいこと」に回答した550の地方自治体のうち、86.2%が「財源確保・支援」を挙げた。

 最近は物価の高騰が家計を直撃する中、国も予算を計上しているが、家庭からの支出を軽減するための財源の議論は避けられないだろう。

 こうした中、プロ野球は7月の12球団オーナー会議で、地域展開に伴う財源確保を主目的に、プロ野球の試合を対象とした新たな「スポーツくじ」の導入に向けた検討開始を決めた。今後の行方が注目される。

 ほかにも、山間部などの地方によっては、指導者が集まらない問題にも直面する。


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