2026年8月27日(木)

スポーツの新潮流

2026年8月27日

少子化の中
「金の卵」をどう発掘するか

 また、地域展開がスムーズに進んでも、少子化という根本的な問題は解決されない。過疎化が進む地方では、競技によっては子どもたちの人数確保が困難となり、受け皿となるチームや部活が淘汰されかねない。実際に多くのスポーツで、高校生の競技人口がここ20年ほどで減少の一途をたどっている。

 子どもたちの数が限られる中で、多様な競技が共存していくために、部活動が複数のスポーツを体験できたり、シーズン制を導入したりすることで、スポーツに触れる選択肢を広げることはできないのか。

 豪雪地帯では野球やテニスなどは冬場にできず、近年の猛暑続きで夏場に屋外で行うスポーツには熱中症リスクが伴う。例えば、野球をやっている子どもたちが体力を培う冬場には陸上やサッカー、降雪地方では屋内でできるバスケットボールやバレーボールなどをするといった、中学からの部活をシーズンごとや曜日ごとに「複数選択」できる制度によって、子どもたちを複数のスポーツが〝シェア〟できるようになれば、競技人口を増やすことができるかもしれない。

 それは子どもたちが得意な競技と巡り合える機会の増にもつながるだろう。少しでも経験したことのある競技ならば、プロリーグなどを観戦する動機も増し、市場が先細るのを防ぐこともできる。

 地域展開の受け皿の一角を担う総合型地域スポーツクラブは、多種目や志向・レベルに合わせて参加できる多志向を特徴に掲げる。ドイツや米国などでは、地域主体でこのようなスポーツ活動が浸透する。

 日本でも、一部の地域で導入されているが、子どもたちが季節ごとに複数競技を経験するといった仕組みの浸透までにはいたっていない。部活動を学校単位から地域へと展開することで、子どもたちが複数のスポーツを横断できる環境の礎として根差す機会にならないか。前出の伊藤さんは「部活動の運営は行政の判断に委ねられるが、指導者を配置する立場からすれば、柔軟に子どもたちを受け入れることは可能で、そのような環境は理想と言える」と話す。

 多様なスポーツが、限られた子どものパイを分け合い、様々なスポーツにチャレンジすることで、それらの楽しさを見出せる環境を生み出していく──。そんな未来を描けるのであれば、少子化の中でも日本のスポーツ界がさらなる発展へと進むこともできるようになるはずだ。

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Wedge 2026年9月号より
日本スポーツ界の新潮流 変革の時をつかめ
日本スポーツ界の新潮流 変革の時をつかめ

大谷翔平、三笘薫、北口榛花、阿部詩、八村塁、松山英樹……。世界で活躍する日本人選手がここ最近、増え続けている。国内では、スポーツの力をまちづくりへ生かそうと、スポーツ界・民間・行政の連携も広がっているほか、新たな競技の普及も進んでいる。一方、少子化などの課題は競技人口にも影響を及ぼし始め、精神論や根性論など「昭和的価値観」の指導のあり方も見直され始めた。まさに、日本スポーツ界は変革の時を迎えている。新潮流を、日本社会へどう生かしていくか─。32年ぶりに日本でアジア大会が開催される今、その可能性を探りたい。


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