さらにこの3ヵ国にエジプトが加わった4ヵ国協力の枠組みが構築され、26年3月19日に外相会談をサウジアラビアのリヤドで実施したのを皮切りに、3月29日にパキスタンのイスラマバード、4月18日にトルコのアンタルヤで同様の会合が開かれ、トルコ、サウジアラビア、エジプトは米国・イラン戦争におけるパキスタンの仲介を全面的にサポートしていくことを表明した 。ロシアのウクライナ侵攻の際に見られたように、トルコも近隣諸国の紛争の仲介に積極的な国であるが、イランと米国との仲介に関しては、伝統的にパキスタンがイランと外交チャンネルを有しており、トルコが無理に仲介役をするよりも、パキスタンをサポートする方が現実的な路線と考えたようである。6月15日に米国とイランの停戦合意が延長されたことをパキスタンが発表した際、エルドアン大統領はパキスタンの仲介を労っている 。
ミニラテラリズムという戦略
さらにこの4ヵ国はミニラテラリズムの動きを加速させる。ミニラテラリズムとは、近年注目されている、バイラテラル(2国間関係)以上、マルチラテラル(多国間関係)以下の3ヵ国以上の小規模だが小回りの利く枠組みである。
代表的なものとして、米国、英国、オーストラリアによるインド太平洋の安全保障枠組みであるAUKUS(オーカス)、米国、日本、オーストラリア、インドによる同地域の安全保障枠組みであるQuad(クアッド)が挙げられる。ミニラテラリズムはマルチラテラリズムとは異なり、特定のイシューに絞ったものが多く、AUKUSやQuadなど特に安全保障分野に焦点を当てたものが多い。
パキスタン、サウジアラビア、トルコの3ヵ国は8月7日に共同防衛協定を締結したと発表した。これは相互防衛協定を発展させたもので、NATO同様の集団安全保障(いずれかの国が攻撃された場合は、3ヵ国全ての攻撃と認識)体制をとるというものであった。
この枠組みにエジプトは入っていないが、エジプトの参加も視野に入れているとみられている。対イスラエル(また、イスラエルと密接な関係を構築するUAE)という点で、核兵器保有国であるパキスタンがこの安全保障枠組みに名を連ねていることは、抑止の観点からも重要である。
今後、どう動くのか
このように、最近のトルコの中東外交は、いかにイスラエルの動きを抑止するかに重点が置かれ、米国との良好な関係、パキスタン、サウジアラビア、そしてエジプトとのミニラテラリズムがその手段となっている。米国との良好な関係の維持を考えると、米国とイランの戦争でトルコが外交的に動ける余地は少ない。パキスタンをバックアップして、早期に両国関係が安定することを目指すのが得策だろう。
トルコはむしろ、米国・イラン戦争の第二戦線とも言えるイスラエルとヒズボラの抗争を注視しているように見える。イランの将来―イスラム共和国が継続するのか、それとも親米体制が発足するのか―は不透明だが、トルコ、サウジアラビア、エジプトといった中東の地域大国はイスラエルの域内覇権主義を抑止することに注力していくだろう。
※内容はあくまで個人的な意見であり、所属機関の考えとは全く関係ありません
