もっと「物語」があっていい
愛されるプロ野球になるには?
──アニメ同様、野球にも「推し活」の流れが来ていますね。
松田 僕がプレーしていた時からその流れは感じていました。ナゴヤ球場の一塁側ブルペン近くには選手を見に来たファンが座っていて、若い女性が報道カメラマンのような望遠レンズつきのカメラで選手を撮っていました。中日でも根尾昂選手や石川昂弥選手、岡林勇希選手などには子どもや女性ファンが多いです。
富坂 みんな地元の選手で素晴らしいですね。私はプロ野球ファンの裾野が広がっていていいと思う半面、慎重に見ていくべき論点でもあると思っています。野球を純粋に楽しむよりも、選手を〝推す〟ことが中心になると、「勝敗」にかかわらず観客は入り続けます。戦力補強に投資する必要もなくなりますし、ファンも「弱いままでいい」という感覚に陥ってしまうと危惧しています。
もし、中日にそんな未来が続けば、燃える男・星野仙一さんが生きていたら悲しむように思います。やはり、勝つことは最大のファンサービスですから、勝利にはどん欲になってほしいですね。
──今後も「愛されるプロ野球」であるためには何が必要でしょうか。
松田 技術が進歩して科学的なアプローチが可能になり、個人の特性よりも最適解が分かってきた結果、イチロー選手や種田仁選手といった個性的なバッティングフォームや野茂英雄選手のようなトルネード投法は見なくなってしまいましたね。
落合監督以降の中日は「守り勝つ野球」が定着していますが、ホームランテラスもできましたし、かつての「野武士野球」のように、打ち勝つ中日も見てみたい気もします。
富坂 おっしゃるとおり、プロ野球には、もっと〝物語〟があっていいですね。前述した近藤監督は現役時代、オフに不慮の事故で右手中指に大けがを負いましたが、それがきっかけで魔球・パームボールを会得しました。チームにも個性や物語があってもいい。他チームから放出された選手を集めてくるのも中日が積み重ねてきた一つの物語です。古くは西本聖選手、川崎憲次郎選手、松坂大輔選手……。まさに中日は人材の「再生工場」でした。
地域にももっとこだわってほしい。「名古屋が東京を倒す」「広島には負けられない」。そんな地域同士の物語を打ち出してほしいですね。
──今年のプロ野球も終盤に差し掛かります。また、愛知・名古屋アジア大会も間もなく開幕です。
富坂 中日は必ずAクラスに行きますよ!9月19日からはアジア大会も開催されるので、中日戦とアジア大会を観戦したいですね。私の専門で言うと、一時期は、日中関係悪化で中国がボイコットするのでは、とも思っていましたが、その懸念はなくなりました。卓球やバドミントンなど、世界クラスの試合が見られるのですから、すごいことです。
松田 中日も7月は2年2カ月ぶりに月間勝ち越しを決めましたし、まだまだ諦めるわけにはいきません!私は現在、警察・司法担当記者ですが、自分がそうであったように、いつか二軍選手にも光を当て、彼らを鼓舞するような報道をしていくことが夢です。アジア大会も大いに期待です。我らの地元、愛知・名古屋の盛り上がりから目が離せません。
