「ネオンって、裏側に配線とかトランス(変圧器)とかネオン管を支えるサポート(支柱)があるじゃないですか。そういうものを設置する壁の中に収められれば一番いいんですが、現場によっては見えてしまうし、わざわざ見えるように施工する場合もあるんです。ネオン管を曲げるだけじゃなくて、施工も含めたトータルな仕事にどこまで神経を使って美しく仕上げるか。そこがネオン職人のセンスなんです」
なるほど。感性とか感覚とは別物、ということらしい。
「いくら仕事が下手でも、とりあえず点灯すれば作品にはなるけど、商品にはなりません。僕が自分は職人だと言うのは、商品としての品質に自信があるという意味なんです。若い人の中にはネオン・アーティストって名乗る人が多いですが、アーティストって自分から名乗るものじゃなくて、人から言われるものじゃないですかね」
ネオンだから灯せる
人を惹きつける光
横浜港に面した新山下にある高橋さんの工房の中には、バーや喫茶店から3Dアートまで、自作のネオンサインが所狭しと飾られている。
高橋さんがつくるネオンサインは極めて耐久性が高く、工房に展示されているネオンは2000年に独立してから今日まで、一度もメンテナンスをすることなく灯り続けているという。
「LEDを使ったフェイク・ネオンが流行していますけど、僕は手を出しません。技術がなくても、アクリル板をレーザー加工してLEDを埋め込むだけで誰でも作れちゃいますが、LEDの光って、目を刺すような冷たい光じゃないですか」
高橋さんが一番好きなのは、透明管を使ったネオンガスの赤い光。
LEDがクリアな光だとすれば?
「うん。ネオンの光はクールだよね」
帰路、横浜港を背に山下公園からホテルニューグランドを眺めた。夕闇の中にボーっと浮かび上がるHOTEL NEW GRANDの文字に、なぜか軽い胸騒ぎを覚えた。
年上の女性に憧れた若き高橋さんの気持ちが、分かる気がした。
