2026年9月14日(月)

Wedge REPORT

2026年9月14日

KPIを「人数」から「価値」へ、海外から学ぶべきこと

 旅行者に追加負担を求めながら観光成長を目指す例として、ニュージーランドがある。同国はInternational Visitor Conservation and Tourism Levy(IVL)を導入しており、24年10月には35ニュージーランドドルから100ニュージーランドドルへ引き上げた。

 収入は環境保全や観光関連プロジェクトに投資される。同時に、ニュージーランド政府は観光成長も目指している。25年のTourism Growth Roadmapでは、国際訪問者数を26年までに少なくとも19年の389万人まで回復させ、23年に99億ニュージーランドドルだった観光輸出額を34年までに198億ニュージーランドドルへ倍増させる目標を掲げている。

 もちろん、日本のビザ手数料は行政手数料であり、IVLのような観光・環境目的の負担金とは制度目的が異なる。それでも、ニュージーランドは、旅行者に一定の負担を求めることと観光成長を目指すことが、政策上必ずしも目標としては矛盾しない事例である。

 観光政策の目的そのものを問い直している都市が、アムステルダムである。同市は、訪問者にとって魅力的であるだけでなく、都市と市民生活にもプラスとなるvisitor economyを志向している。ホテル政策、リバークルーズの削減、観光フローの管理などを通じて、観光と住民生活のバランスを取ろうとしている。

アムステルダム(neirfy/gettyimages)

 本稿の言葉でいえば、観光政策の目的を「訪問者数の最大化」から、「地域に残るNet Value(純価値)の最大化」へ転換する考え方である。観光客が増えても、交通混雑、家賃上昇、騒音、ごみ、環境負荷などが拡大すれば、地域全体の価値が高まったとは限らない。見るべきなのは、観光が生む価値から、それによって生じる負担を差し引いたNet Valueである。

 ニュージーランドやアムステルダムの事例が示しているのは、旅行者負担、観光成長、混雑管理、住民生活の質を切り離して考えるべきではないということである。人口減少と人手不足が進む日本でも、訪日客数だけを増やし続けるモデルには限界がある。

 宿泊、交通、飲食の供給能力には制約があり、一部地域では住民との摩擦も顕在化している。円安は強力な集客要因であるが、安さに依存した観光は、低単価、高混雑、人手不足、住民負担につながりやすい。


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