合理的な判断はできるのか
カーニーの毅然とした対応はカナダ国民の支持を得ており、米国のカナダ産品に対する当面の50%関税の対象は、米国への輸出全体の5%程度なので、その影響はある程度限定的であろう。しかし、今後生じるカナダ経済と国民生活に及ぼす影響次第では、国民の支持も変化する可能性もあろう。
特に、トランプが来年1月1日から自動車等に追加の50%関税を課すとの脅しを実施する場合には、カナダ経済に対する影響は深刻なものとなり、米国への輸出を目的にカナダで生産している日系自動車企業にも重大な影響が生ずることになる。米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)は形骸化し、北米全体の競争力が損なわれる。
自動車産業分野で構築されている二国間のサプライチェーンは米加双方の企業にとって極めて重要な利益をもたらしており、また、国境貿易やエネルギー分野における相互依存も相互の利益となっているので、合理的な判断ができれば、米側もカナダとの全面的な貿易戦争を回避したいはずである。関税措置の影響や世論の反応を見つつ交渉再開の糸口を探る状況となる可能性は十分にあると期待したい。
カーニーは、米国の中間選挙に向けていわゆるスウィング・ステートを意識した対抗策を取っており、この社説もそれがある程度の効果を持つことを期待しているようであるが、トランプが反発して逆効果ともなりかねない。やはり、トランプのやり方の米国経済に与えるマイナスの影響についての米国民の不満が高まり、中間選挙全体で共和党に不利に働くというような認識が生まれることが望ましい。
社説の指摘の通り、カーニーとしては、事態の更なる悪化を回避するためにも交渉の再開を模索しつつ、カナダ国民に忍耐を求め、米国への経済的依存を少しでも減らすための時間を稼ぐという選択しかないのかもしれない。

