合理的配慮が必要なことも
高機能発達障害者の中には、知能の高さにも関わらず、職場で適応上の困難を抱える人がいる。生来、想像力に乏しく、コミュニケーションが不得手で、複数課題の同時処理に困難を感じている。これらのスキルは、企業の総合職にとって必須だが、発達障害者には障壁となる。
その中に合理的配慮を必要とする人が少数存在することは、事実である。彼らは、一定の配慮が与えられれば、相応の稼働が可能だが、それが与えられないと、就業継続できたはずなのに、休職に追い込まれ、短期欠勤で済んだはずなのに、長期休職に追い込まれ、職場復帰できたはずなのに、退職に追い込まれる。無用の休職、休職の長期化、不本意な早期退職は、結果的に彼らのキャリアを崩壊させ、最悪の場合、労働市場から追い出すことにもなりかねない。
ここに、メンタルヘルス不調者に対する治療と仕事の両立支援が求められることになる。厚生労働省は、「適切な配慮があれば就業継続できたであろうにもかかわらず、適切な配慮が受けられなかったために、メンタルヘルス不調者が、不本意に休業や離職することも少なからずあろう」ことを指摘し、「メンタルヘルス不調による休業や離職は、勤務先から適切な配慮が提供されることで、一定程度回避することが可能」と述べている(厚生労働省 2025 『治療と仕事の両立支援 メンタルヘルス不調者の主治医向け支援マニュアル』)。
2026年4月からは、各事業所に対して両立支援を努力義務とし、メンタル不調事例に対しても、勤務先に配慮を提供し、主治医との情報交換を進めるよう促している。厚労省は、さらに「治療と仕事の両立支援カード」(本人記載欄・医師記載欄の双方を含む診断書等価物)を導入し、主治医と職場との情報交換を求めている。
意見を記す主治医は、職場のことを知らないことの方が多い
ただし、ここには、注意しなければならないことがある。主治医の意見は、会社に対する「命令」ではないという事実である。したがって、会社は医師意見の通りにする義務はなく、むしろ、そうすべきではないことの方が多いというのが筆者の実感である。
主治医は、職場のことを何も知らない。自身の専門家意見が、当該社員において総合職としての職歴を変え得るリスクに気付いていない。
会社からすれば、企業社会の常識を知らない医師が書いた意見を、そのまま業務命令のように扱えば、その社員に対し人事上の不利益をもたらしかねない。医学的見解は、たとえそれが善意に基づくものであっても、事業所側が適切な修正を加えなければ、本人の長期キャリアに傷をつけることになる。
