「合理的配慮」とは、障害者が健常者と同条件で働くことを可能にするための措置である。障害を理由に「定型的な仕事」「環境変化のない職場」「対人交渉からの免除」を要求するのなら、その場合、「定型的な仕事」「環境変化のない職場」「対人交渉からの免除」に従事する健常者と同等の処遇が与えられる。それは、誤解してはならないが、「非定型的な仕事」「環境変化のある職場」「対人交渉」に従事する健常者と同等ではないのである。
特性は克服できる
精神科医は、疾患ごとの行動特徴をあたかも不変の障害とみなしがちである。その結果、その特徴を、職業上の永遠に克服できないハンディキャップと捉えて、そこから合理的配慮の永続的要求へと飛躍する。たとえば、発達障害を例にとれば、「コミュニケーションは苦手」、「マルチタスクは苦手」、「対人交渉は困難」などである。
実際には、人は成長する。社員も成長する。企業が求めるコミュニケーション・スキルには、あるパターンがあって、それを習得すれば、発達障害でも「高機能」ならば十分対応可能である。
医師に「待った」をかけられるのは、医師である。主治医の医学的意見に、同じく医学的意見を付して「待った」をかけられるのは産業医である。
ここにおいて産業医の果たす役割は大きい。主治医の医学的意見を尊重しつつ、職場情報と人事制度を考慮し、何よりも社員本人と協議を重ねて、主治医意見を実現可能な配慮へと翻訳しなければならない。
大切なことは、診断名からただちに「永久免除」を導かないことである。それは、配慮であるどころか、「総合職失格」を意味しかねないというリスクにつながることを認識しておく必要がある。
