2026年9月18日(金)

医療神話の終焉―メンタルクリニックの現場から

2026年9月18日

高学歴の発達障害社員に企業はどうすべきか

 以上を考慮に入れて、先ほどのエリート社員に対して、企業がどうすべきかを考える。

 まず、企業にとって当然のことが、メンタルクリニック医師にとっては当然ではないという事実を考慮しなければならない。会社には職務体系があり、就業規則があり、処遇制度がある。キャリア形成の仕組みがあり、業績・能力・情意に関する人事考課がある。人事考課をもとに、昇給や賞与、昇格・昇進などの処遇が決定される。

 しかし、主治医は、企業社会で生きているわけではない。人事評価に関する知識をもっていない。

 診断書に「定型業務は得意」、「環境変化・対人交渉は不得手」と記し、実際にその意見が採用されてしまえば、当該社員がどのような人事考課を受けるか、想像することができない。直截的に言えば、主治医は、賞与・昇給・昇格に関わるリスクに、まったく気づいていない。

 気づいていないのは、社員も同じ可能性がある。大学時代に受けた手厚い支援を、会社に対しても当然の権利のように求めてしまう。

 しかし、企業は大学とは異なるルールで動いている。企業とは、本質的に「営利を目的とした社団」であって、教育の機会を与える場ではない。

 社員に対して、第一義的には労務提供を求め、その対価として給与を支払う。総合職には、当然のように非定型、環境変化、対人交渉を要求する。それこそが高収入を約束された職責にふさわしい業務とも言えるからである。

 こうした時、社員が「定型的な仕事」「環境変化のない職場」「対人交渉からの免除」を要求するとは、何を意味するのか。それは、総合職としての約束された未来を、自ら進んで放棄するようなものではないか。

 本人は、人生の効率化と最適化のために、賢明にもストレス最小化戦略を採用したつもりでいる。しかし、そのことが、エリートコースからの離脱になりえるという事実に、迂闊にも気づいていないといえる。

業務内容が異なれば、処遇も異なる

 合理的配慮の結果、昇給、賞与、昇格・昇進に不利益が生じることは、差別ではない。確かに、障害者雇用促進法は、障害を理由として賃金、配置、昇進、教育訓練などについて差別的に取り扱うことを禁止している。しかし、担当する職務・責任・成果が異なれば、当然、処遇差は発生する。それは障害を理由とする差別ではなく、業務内容の差異による区別である。


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