国籍で分ければ、別の不公平が生まれる
外国人観光客といっても一様ではない。短期滞在で観光を目的とする人もいれば、日本で働き、学び、生活する人もいる。国籍や民族を基準に一律の運賃を設定すれば、公平性や実務上の問題が生じる可能性がある。これは制度設計上の一般的な懸念であり、京都市が国籍別運賃を決定したという意味ではない。
中国人観光客についても、中国大陸から訪れる旅行者と、台湾や東南アジアの華僑圏から訪れる旅行者では、旅行の形態や日本との関わり方が異なる場合がある。ただし、地域や出身を一括りにして旅行形態を推測することは適切ではない。だからこそ、国籍を固定的な基準にするのではなく、短期滞在か長期滞在か、観光目的か生活目的か、どの時間帯や路線を利用するかという、検証可能な行動基準で区分すべきだ。これは筆者の意見である。
実際の混雑への影響を測定し、状況に応じて見直せる仕組みの方が合理的だ。国籍を前提にした制度は、訪日客の構成や旅行市場の変化によって、制度の根拠が揺らぐおそれがある。
負担増の使い道まで示せ
訪日外国人には500円程度の負担を求め、日本人は居住地を問わず一定の運賃にする案も含め、幅広い議論が必要である。ただし、これは筆者が示す選択肢の1つであり、京都市が決定した案ではない。外国人か日本人かを乗車時に判定する制度は、本人確認の負担が大きく、誤認や差別的な運用を招くおそれがある。実施するなら、国籍ではなく、短期滞在者向けの観光パスや空港・駅で販売する専用商品など、利用形態に基づく仕組みに限定すべきだろう。
重要なのは、負担を求めるだけで終わらせないことだ。増収分を増便、手荷物対策、バス停の整備、運転手の確保に充てることを明示すれば、利用者の理解は得やすくなると私は考える。混雑の激しい路線を増強し、観光客を鉄道や専用シャトルへ誘導するなど、運賃以外の対策も組み合わせるべきだ。
そのためにも、制度導入前に、対象者数、想定利用回数、割引による減収、システム改修費、本人確認や問い合わせ対応の人件費、増収見込みを公表する必要がある。導入後は、混雑率や乗車拒否の発生状況、平均乗降時間、日常利用者の負担、観光客の利用動向を定期的に検証し、一定期間ごとに制度を見直すべきだ。費用に見合う効果が確認できなければ、制度を縮小する判断も必要になる。これらは制度導入に向けた提案であり、現時点で公表済みの検証結果ではない。
オーバーツーリズム対策が、京都と日々関わる人々の負担増につながってはならない。観光客に一定の負担を求めることには理解できる。しかし、住所だけを見て人を分ける制度は、京都の実情にそぐわないと私は考える。
